溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

「悠里、早く」
「は、はい。……って」

 今、私のこと下の名前で呼んだ? どうしよう、うれしい。ついに妄想が現実に……!

 維心さんが『悠里』と呼ぶ声を脳内でリフレインさせながら、じーんと喜びに浸る。

 この結婚、実はそれほど悪くないんじゃない? 彼は私を愛してこそいないけれど、結婚生活には前向きだ。一緒にいられるだけでいいじゃない。多くを望まなくたって。

 私はニコッと彼に微笑みかけ、大切に大切に、愛しい名前を口にする。

「維心さん。これから、よろしくお願いします」

 彼は一瞬呆然としたように固まって、それから急にあちこちに視線を泳がせるとくるりと私に背中を向ける。

「あ、ああ。俺たちもそろそろ行こう」

 あれ? ダメだったかな、今の挨拶。子作りのためだけのパートナーにしては、重かった?

 多くを望まないと決めたそばから、彼のそっけない態度に軽く傷つく自分が情けなくてため息がこぼれた。

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