溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
そう尋ねた直後、目の前に立った彼に顎を掴まれ、強引なキスで唇を塞がれた。
不意打ちでびっくりしたけれど、〝おやすみ〟の意味かな……? なんて甘い気持ちに浸る。
しばらくして、クスッと笑った彼の鼻息が顔にかかった。
「……ニンニク風味」
その発言のせいで、とろんとしていた思考が一気に現実に戻り、思わず彼を睨みつけた。
「い、維心さんが作ったお料理のせいじゃないですか!」
「別に嫌だとは言ってない。俺だって同じ匂いを発しているだろうし、きみの唇は、たとえニンニク風味でも美味だ」
「なんですかそのフォロー……」
ぶつぶつ言いながら、ぷいっとそっぽを向く。しかし怒っているというよりは、キスを交わした上『美味だ』なんて言われた恥ずかしさで彼の目が見られないだけだ。
「じゃ、今度こそ行ってくる。あんな料理を食べた後だから、あまりきみと触れ合っているとここで押し倒してしまいそうで危険だ」
少し残念そうにため息をついた維心さんが、私の頭にポン、と大きな手を置く。
お、押し倒すって……ここ、玄関ですけど。
それに、いわゆる精のつく料理を食べたからって、そんなにわかりやすく効果が出るものなのかな? それとも、維心さんなりのジョーク?
彼の本心がよくわからないながらも、意味深なセリフに否応なく胸はドキドキして、ようやく彼がドアの向こうへ消えていくと、気が抜けるのと同時に少し寂しくなった。
とりあえず今夜は子作りから解放された。緊張しなくて済むのはありがたいけれど、慣れない新居にひとりきりなのは、やっぱり心細い。
引っ越し疲れもあるのでその日は早く寝てしまうことに決め、歯磨きを済ませるとすごすごと自室のベッドに入った。