溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

 いてくれてよかったって、どういう意味だろう。首を傾げる私に、課長は口元をニヤニヤさせて言う。

「桐ケ谷部長がきみを呼んでる。すぐに彼のところへ行ってくれ」
「えっ? 桐ケ谷部長が……?」

 名前を聞いただけで、どきりと胸が跳ねた。

 営業部の部長、桐ケ谷維心さんは会社のトップである桐ケ谷社長のご子息で、いわゆる御曹司。

 だからといって親の七光りというわけではなく、営業部で現場を学びながら人一倍の結果を残し、三十三歳の若さで現在の役職に出世したすごい人だ。

 おまけに、高身長でイケメン、かつ独身。当然女性社員たちからの人気は高く、なにを隠そう私も彼に憧れるうちのひとりだ。

 ただ、性格はクールで冷徹な合理主義。女性社員たちからの黄色い声や熱視線なんて完全スルーで、どんな美人が言い寄っても少しもなびかないらしい。

 そんな情報にすっかり怖気づいてしまったので、私の恋はずっと、一方的な片想い。とくに積極的な行動を起こすつもりもないので、この恋が実る確率は、ゼロに等しい。

 彼の方から名指しで呼び出される心当たりなんて、仕事でなにかやらかしてしまったとしか思えない。


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