溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
子作り婚の理由ーーside維心
悠里に惹かれたきっかけは、この年で恥ずかしい話だが、ひと目惚れだった。
入社した彼女が営業部に配属されたその日、朝礼で緊張気味に挨拶をする彼女とふと目があった瞬間、大きく一度胸が脈打つ。こんな経験は初めてだった。
彼女が喋る姿はなぜかスローモーションで、周囲には小さな花がはらはら舞っているように見える。
俺の目はどうしてしまったんだ。それに、動悸がして胸が苦しい。
スーツの上からさりげなく心臓の辺りに触れると、その手が上下するほどに激しく脈打っている。
確かに彼女の容姿は客観的に見てもかわいらしいが、だからってこんなに取り乱すものだろうか?
動揺しながらも今一度悠里に視線を戻したら、偶然目が合って、かぁっと頬が熱くなった。
おい、正気になれ。相手は十歳も年下の新入社員だぞ?
そう自分を窘めたところで、動悸も体温の上昇もおさまることはない。俺の中で長い間錆付いていた、色恋に関するあらゆる感覚器官が、一気に眠りから覚めた瞬間だった。