溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~
悠里の涙に勝手に気を揉んだ俺は、彼女の直属の上司、清水課長に探りを入れることにした。
先日、偶然オフィスで彼女が涙する姿を見たのだが、なにか仕事で失敗をしたとか、最近恋人にフラれたとか、落ち込むような理由を知らないかと。
『いや、私はなにも知りません。恋人がいるという話も聞いたことがないですね』
『そうですか』
会社の廊下でつかまえた清水課長は俺の質問攻めにキョトンと目を丸くし、眼鏡の位置を直す。そして、首を傾げながら尋ねてきた。
『部長、どうして早坂をそんなに気にかけるんです?』
『どうしてって……』
俺は口ごもりながらも、他人の前で悠里への想いをどう言葉にしたらいいのかわからず、頬が熱くなるのを感じた。
しかし、その態度で清水課長にはすべて察しがついたらしい。彼はにやりと締まりのない笑みを浮かべたかと思うと、『協力しますよ』とうれしそうに頷いた。
どうやら清水課長は、他人の恋愛に世話を焼くのが好きなタイプらしい。
その日から悠里について知る限りの情報を与えてくれるとともに、俺の相談に乗ってくれた。