もっと蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻への溺愛を止められない~
「ごめんなさい。準備に時間がかかりそうなので、柚瑠木さんは先にテナントの喫茶店で待っていてもらえませんか?」
そう言って彼に家から出てもらって、すでに一時間は経ってしまいました。やっとすべての準備を終えて姿見でもう一度確認してからバッグを持って部屋を出ます。
時計の時間を見て焦りますが、走ってはせっかく香津美さんが選んでくれたコーデを台無しにしてしまうかもしれなくて……
それにしても何故でしょう? 今日はやけにチラチラと人に見られているような気がするのです、やはりこの格好が私に似合っていないのでしょうか。
周りの人に視線から顔を隠すように少しだけ俯いて、柚瑠木さんの待ち合わせの喫茶店まで急ぎます。
喫茶店に入って店員さんに待ち合わせだと伝えると、奥の席で柚瑠木さんが本を読んでいるのを見つけました。
窓から差し込む日の光に一瞬だけ眩しそうに目を細めるその姿も素敵です。ほら、他の女性客の方も柚瑠木さんの事が気になっていらっしゃいます。
前のように他の女性に声を掛けられる前に、彼の傍に行かなくては。
この姿に柚瑠木さんはどんな反応をされるのか、緊張で胸がドキドキしてしまいます。
「すみません、柚瑠木さん。お待たせしました」
「……え、月菜さん?」