もっと蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻への溺愛を止められない~
その言葉は千夏さんには予想外の事だったらしく、彼女は慌ててその場から逃げ出そうとしました。ですがその細い手首を柚瑠木さんに掴まれてしまって……
「さっさと車に乗ってください、今日は特別に月菜さんの隣に座らせてあげますから。すみません月菜さん、千夏が逃げないように隣で見張っててください」
「は、はい! 分かりました」
後部座席に押し込まれていく千夏さん、そんな彼女が諦めたように座ったのを確認し私もその隣に乗り込みました。もし千夏さんが不安なのならばと思いその手を握ると、彼女も優しく握り返してくれて……
「まったく、今日の柚瑠木兄さんは強引過ぎるわ」
「そうですね、でもきっと千夏さんの事を考えての事だと思います」
少し呆れたようにそう文句を言う千夏さんは、少し子供っぽさもあり可愛らしく見えたりもします。でもやはり千夏さんが大人しく部屋に引きこもっているような女性とは思えないのです。
「それは分かってるのだけどね……前は柚瑠木兄さんだって私の事にここまで口出しなんてしなかったのよ?」
「そうなんですか? ではいったい何故……?」
最近になって柚瑠木さんのとる行動が変わってきたという事なんでしょうか? 確かに結婚当初の頃よりも彼は優しく素直になってくれてるとは思ってましたが。
千夏さんに対しても変化があったのは知らなかったので……
「貴女のお陰でしょう? 時間をかけて月菜さんが柚瑠木兄さんをこんな風に変えてくれたんじゃない」