もっと蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻への溺愛を止められない~


 店内を一通り見終わった後は二階の作業場へと移動して、このショップの店長である女性の話を聞きながらアクセサリーの制作を始めます。
 思ってたよりも小さな材料に悪戦苦闘しながらもどうにか形にすることが出来ました。
 千夏(ちなつ)さんは最初から最後の仕上げまで真剣そのもので……やはり彼女は沢山やりたいことを我慢しているのではないかと思いました。
 お店から出て車に向かう途中、千夏さんは私の袖をツンと引っ張って……

「ねえ、月菜(つきな)さん。今日のアクセサリー、もしよかったら記念に交換しない?」

「ええ? ですが私のは千夏さんのに比べると、綺麗に出来ているとは言えませんし……」

 そう千夏さんのは売り場に並べても問題ないと店長から言われるほどの出来、とてもじゃないですが私の作った物とは雲泥の差で。
 ですが千夏さんはそうじゃないと首を振ってみせました。

「私ね、少しでも誰かとの思い出が欲しいの。これから先、いつになれば自由に外に出れるか分からない生活だから」

「千夏さん……」

 何故そんな諦めた顔ばかり見せるのですか? 柚瑠木(ゆるぎ)さんの言う通り、私達にはもっと千夏さんに出来ることは無いのでしょうか。
 楽しいはずの時間ですら、千夏さんはどこか自分の感情を抑え込もうとしているように感じました。


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