君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~
「副社長、ご飯はどうします?何か食材があれば作りますけど」
「食材……ね。残念だけどうちには何もないよ」
「そうなんですか?じゃあ、買ってきますね」
「ちょっと待って。今から?」
「はい」
「いや、今日はいいよ。せっかくだから何か食べに行かない?」
突然の誘いに状況がのみ込めず、数回瞬きした。
「伊藤さん、おーい!どうしたの?」
副社長が私の目の前で手をヒラヒラさせる。
「あ、すみません。えっと、なんでしたっけ」
「だから、今からご飯食べに行かない?」
「えっと、それは私と副社長が……ですか?」
「そうだけど。何か問題でもある?」
副社長は苦笑いしながら言う。
問題は大ありだ!
「いえ、特に問題はないんですけど」
だけど、私の口から出た言葉はなぜか反対のものだった。
予想だにしない展開で動揺している。
こんなことがあってもいいんだろうか。
副社長のお世話をするというのを仕事だと割り切ればどうにかやれる。
だけど、一緒に食事ともなれば話は別になる。
「だったら行こうか。食事の後に家に送るから」
「そこまでしてもらうことは出来ません」
「俺がしたいんだから気にしないで。さあ行こうか」
背中を押され玄関へと促された。