君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~
「気にしなくていいよ。逆にごめん、俺がワインをすすめてしまったから」
「いえ、私が調子に乗って飲んでしまったので」
「確かに美味しそうに飲んでたよな」
クスクスと思い出し笑いされ、恥ずかしさを誤魔化そうとお礼の言葉を口にした。
「今日はありがとうございました。料理もすごく美味しかったです」
「そういってもらえて連れてきたかいがあったよ」
優しい副社長の眼差しにドキドキしてしまう。
最初の頃は料理の味が分からないぐらい緊張していた。
お酒の力もあり、だいぶリラックスしてからは料理を味わうことが出来たんだ。
まさか、副社長と一対一で食事をする日が来るなんて想像もしていなかった。
会社の飲み会とかあっても、副社長と話した記憶がない。
私のことが苦手っぽいので、こちらから仕事のこと以外で話しかけたことなんて一度もない。
遠くから見つめるだけの存在だったのに、今日一日で人生が180度変わった。
こんな夢みたいなことがあってもいいんだろうか。
夢見心地で副社長と話していたら、車の揺れが気持ちよくなりだんだん瞼が降りてくる。
頭もカクっと前に倒れ、慌ててヘッドレストに頭をもたれかからせる。
寝たら駄目だと思えば思うほど、睡魔というのは襲ってくるわけで。
「伊藤さん、家はこっち方面でいいんだよね?」
薄れゆく意識の中で副社長の言葉が聞こえた気がしたけど、それに答えることは出来なかった。