君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~

ある日、お袋が「香澄ちゃんがお嫁さんだったらいいのに」と言い出した。
香澄ちゃんと言われ、最初は誰だか分らなかった。
話を聞いて伊藤さんだということに気づく。

お袋は男女問わず、よく社員と昼飯を食べに行っていた。
うちは他の会社より社長と社員の距離が近いと思う。
お袋も普段は社長ぶらない。
仕事となれば容赦なく、冷徹で敏腕女社長に早変わりだ。

そんなお袋の楽しみが社員と食事をすることらしく、数人で出かけている姿を見ていた。
前から伊藤さんのことをお気に入りみたいで、何度か「お嫁さんだったら」という話は耳にしていた。

つい最近も伊藤さんと食事に行ったみたいで、その話を俺に聞かせてきた。

「香澄ちゃん、真面目だし家事全般が得意なんですって。海里の面倒を見てくれないかしら」
「無理だと思うよ。俺、彼女の苦手なタイプだと思うから」
「それは海里が会社で軽い発言ばかりするからでしょ。いい加減、それを止めなさいって言っているのに」
「だから、女子社員の名前呼びを止めただろ」
「そういう問題じゃないのよ」

お袋はプリプリと怒る。
そうは言っても、向こうにその気がないと駄目だろ。
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