君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~
嫌なら断ってくれと言ったのに、大丈夫ですと真面目な顔で言う。
そこまで言われたら、俺は黙るしかなかった。
俺の部屋を見た時の伊藤さんの表情は固まっていたな。
それからはテキパキと脱ぎ散らかした服を拾って洗濯機の中に入れていった。
今まで女性を部屋に入れたことがない。
だから、伊藤さんが自分の部屋にいることが不思議だったけど、それも悪くないなと思いながら眺めていた。
洗濯物があらかじめ片付くと、伊藤さんはご飯を作りましょうかと言った。
冷蔵庫の中にはまともな食材がないことを伝えたら買いに行くと言い出した。
今日は下見のはずなのに、そこまでしてもらうのは申し訳ないので食事に誘った。
普段、会社の飲み会があっても伊藤さんと話した記憶がない。
今日は一対一だし、酒を飲んだら少しは気楽に話してくれるんじゃないかと思い、伊藤さんにアルコールを勧めた。
「美味しいです」と言って結構飲むから、酒は強いかと思ったけどこんな無防備な寝顔を晒して……。
多少の罪悪感はあるが、庇護欲をそそる姿をみてしまったら手に入れたくなる。
「可愛いな」
ポツリ独り言が漏れる。
さて、これからどうしようか。
どう動くのが最善なのか、この先のことを考えて柄にもなく胸を躍らせていた。