君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~
そんな会社の社長と副社長が言い合いをしているのは今に始まったことではない。
社長と副社長は実の親子だから遠慮がないんだろう。
今回は仕事の話ではなく、応接室が汚いから片付けろという内容だ。
まさか、社長室からくだらないと言ったら語弊があるかもしれないが、そんな会話が聞こえてくるとは誰も思わない。
二人の言い合いに先輩の夏木美桜さんと顔を見合わせた。
「最近、社長と副社長よく言い合いしてますよね」
「そうだね。まぁ、副社長が応接室を自分の部屋のように使っているから社長も我慢が出来なくなったのかも」
美桜さんが苦笑いする。
応接室は副社長の物が散らかっていて、お客さんが来た時は慌てて片付けないといけない。
基本アポイントを取っているお客さんが多いので、急な来客は滅多にないけど。
副社長は、見た目は真面目そうだけど発言に関してはちょっといい加減な部分がある。
仕事に関してはセンスもあり、その能力は高く評価されている。
仕事以外では無頓着だから、もう少し身の回りの整頓が出来ればいいのにという社長の愚痴を聞いたことがある。
「海里、待ちなさい」
社長室を出てきた副社長を呼び止める社長の声がフロアに響く。
「うるさいな。だったらこの中の誰かが俺の面倒を見ればいいだろ」
副社長がフロア全体を見回しながら言った言葉に、社長は呆れたようにため息をついた。