君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~
「君に好意を寄せているから付き合いたいってこと」
低く甘い声が鼓膜を震わせる。
副社長が私に好意を?
そんなの到底信じられない。
だけど、副社長の真剣な眼差しは嘘をついていたり、冗談やからかいの色は見られない。
じゃあ、本当に?
封じ込めていた想いが今にも溢れ出しそうだ。
でも、私は……。
「どうして私なんかを……。あの、さっきも言いましだけど、私は真面目過ぎて面白みもないし……」
「真面目の何がいけないの?俺は伊藤さんの真面目な部分に好感を持っていたよ。毎朝、事務所の机を拭いたり、観葉植物の世話とか人があまり気にかけないところにいつも細やかな気配りをしてくれていたよね」
「どうしてそれを……」
「君が俺の世話係に任命された原因だよ。徹夜が続いたり不規則な生活をしていたせいで応接室に寝泊まりしていたから、伊藤さんが出社してからの行動を見ていたんだ」
そう言われてみれば、何度か応接室から出てきた副社長にコーヒーを淹れたことがある。
「俺は君のことをずっと見ていた。まさか、お袋が俺の世話を伊藤さんに頼むとは思わなかったけどね。さらに驚いたのは、君が俺の世話をすることを了承したことだ。それはどうして?社長に頼まれた責任感から?」
副社長は探るような目で私をじっと見つめる。