君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~
「もしかして、手をつなぐのも初めて」
「はい」
「これから手取り足取りいろんなことを教えてあげるよ。その代わり、香澄には俺の面倒をしっかりみてもらわないとね」
いたずらっ子のように笑い、私の手を握ったまま寝室の方へ向かう。
そうだ、私は社長に副社長の身の回りのお世話を頼まれていたんだ。
本来の役割を思い出した。
副社長が寝室のドアを開けた瞬間に私は口を開いた。
「はい、社長に頼まれた料理、洗濯、掃除など頑張ります」
副社長は足を止め、複雑そうな表情で苦笑いし「そういう意味で言ったんじゃないけど」と聞こえないぐらいの小さな声で呟いた。
気を取り直すように咳払いし、私の顔を覗き込みながら口を開いた。
「頑張るのはいいけど、俺の彼女だってことも忘れないでね」
「彼女……」
「違うの?」
「いえ、違いません」
顔を赤らめながら言えば、副社長は穏やかに微笑み私の頭を優しく撫でた。
自分の気持ちを抑え込まず、一歩踏み出す勇気を出してよかったと心の底から思った。
こんな幸せな未来が待っているんだから……。
そう思ったら、もう一度自分の口からハッキリと気持ちを伝えたくなった。
「副社長、大好きです」
副社長は一瞬目を見張った後、嬉しそうに顔を綻ばせた。
end......?