エル・ディアブロの献身

「……話が、したくて、」
「話?」
「……はい」
「何?」
「え」
「言えよ。俺の後ろにいるから花梛にも聞こえるし」
「……」
「俺がいると言えねぇような話なら、させるわけにはいかねぇんだよなぁ」
「……」
「プライバシーがなんたらとか言うなよ? お前が言えた立場じゃねぇのは自分でも分かってんだろ?」
「……」
「今、話さねぇなら、今後一切こいつに近寄んな。次見たらつう」
「やり直したい」
「あ?」
「やり直し、たいんだ……花梛、」

 辛そうに私の名前を呼ぶその人のことは、私の前に立ってくれている彼のお陰で見えはしない。しかしだからといって、彼の向こう側にいるその人に対してこれまでに抱いてきた感情や、今なお抱いている感情がなくなったわけではない。

「……らしいけど……どうする? 花梛」

 頭上から落ちてきて、私を安心させる声。
 目の前のシャツを少しだけ掴み、嫌だ、の意味を込めて、くいっと引っ張った。
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