エル・ディアブロの献身

 そんなことがあってから、より過保護になった一和理さんと優美さん。特に一和理さんは、親に振り回されたという境遇が似ていると、時には父親のように、時には兄のように、私に接してくる。
 それを、迷惑だと思ったことはない。気にかけてもらえるのはとても幸せなことだ。けれど、その幸せと同じくらい、辛い。

「……さっきの人は、高等部の……高校生のときに、付き合ってた人なんですけど、」
「……」
「……私の中では、とっくに……過去に……なってたんですけど、」
「……話すのは、嫌か」
「……話しても、何も変わらないですから。嫌というより、時間が無駄に思えて……やり直したいって、言ってましたけど、そういうの、応えられないですし」
「……」
「……関わらないのが、最善だと、思いませんか……?」

 視線は動かさず、問いかける。
 一歩、また一歩、足を踏み出す度に近付く我が家。玄関前につけば、彼はさっさと(きびす)を返すのだろう。

「……まぁ、そう、だな」
「……」
「俺も、お前にはちゃんとした男と付き合って欲しいしな」

 妹。家族。
 そう言って、そういう風に扱おうとするくせに、彼は、私を含め、優美さん以外の女性(ひと)と閉ざされた空間でふたりきりにはならないよう、徹底している。
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