エル・ディアブロの献身
ピンポーン。
鼓膜に届いたその音に、意識が浮上する。
「…………何……?」
ピンポーン。
二度目の催促。
しかし、来客の予定はない。そもそも、一和理さんか優美さんしかここには来ない。例外で宅配便も来るけれど、宅配ボックスもないボロい安アパートだから、いつも日時指定でお願いしている。
今日を指定した覚えはない。宅配を頼むのは二週間に一度だ。先週、今週分までのものを受け取っているから、私が忘れているわけではないのは確かだと思う。
「…………しつこい、」
ピンポーン。
そうこうしていれば、三度目。
ここは、モニター付きのインターフォンではないから厄介だ。相手が誰なのか確認するには玄関の覗き窓を見る以外に道はない。けれど、玄関の覗き窓というのは意外にも覗くと相手も気付く。
こちらから見えるのならば、あちらからも見える。そんな思考回路の元に、私はガムテープを貼っているのだけれど、それを剥がして覗けば当然、ガサゴソ音でも気付かれてしまう。
「……違う、ね、」
マットレスから降りて、バックから携帯を取り出す。
もしかしたら、一和理さんか優美さんかも、と思ったからだ。けれど、来る前には必ずメッセージをくれる彼らからのメッセージはない。
否、あるにはあるのだけれど、【昨日は休んでごめん】【休ませてしまってごめんね】という旨のものだった。家に行く、というものは一切ない。
となると、やはり、誰だ、という疑念は拭えない。
「……っ……嘘でしょ、」
ピンポーン。
諦めないと言わんばかりの、四度目が室内に響いた。