エル・ディアブロの献身
ゆっくりと息を吐く。
居留守だと思われるだろうけれど、ガムテープを剥がして覗くしかないか。
意を決して、玄関へと向かう。
「すみませーん! 宅配便です! お留守ですかー?」
あと二歩進めばガムテープを剥がせる。そんな距離まで近付いたところで、響いたその声。
随分としつこい宅配便だなと思いながらも、宅配を受け取るときはすぐに出て受け取っていたから、不在のときはこれくらいしているのかもしれないとも思い、今さらながら「はーい」と返事をした。
「あ、いたんですね。ええと、宝来花梛さんにお届け物です。結構大きいし重いんで、よかったら中まで運びますよ」
チェーンをしたまま少しだけ玄関を開ければ、宅配会社の制服を身につけ、会社の帽子を目深にかぶった男性が両手で大きなダンボール箱を抱えて、母の旧姓であるそれを声でなぞった。
「あの、一回閉じますね。チェーンのけるので」
「あ、分かりました」
大きくて、重い、宅配物。
一体、誰からだろうか。
そんな疑念を抱きつつ、チェーンを外す。過去に一度だけ、私の誕生日に空気清浄機が届いたことがあった。
無論それは一和理さんと優美さんからで、さすがに自分では運べないからと言っていた記憶がある。以降は手渡しでくれていたから忘れていたけれど、今回もその類いだろうか。
しかし私の誕生日は、再来週だ。
「……お待たせしてすみません」
「いえいえ」
疑問符を浮かべながら、扉を開けた。