死と生の境界線
気付いたら自宅のベッドに仰向けになっていて、見慣れた天井だった
どうやって帰ってきたんだっけ……。
意識が曖昧で、はっきりと記憶になかった。
数時間後に、暫く放置していた携帯電話の電源を起動する。
明るくなったディスプレイを見てみても、なんの連絡もない。
所詮、私には誰もいないんだ。
階段を降りてリビングへ行くと、母親が書いたメモが置いてあった。
"遅くなるから、好きに買って食べてね。"
急いで書いたような筆跡と一緒に置かれた5千円札。
いつものことだ。
母親は、仕事に恋に、忙しい。
大体、食事は出来合いのものか、お金が置いてあるだけ。
母親が作った手料理なんて、ここ何年も食べていなかった。
行くあてなんてなかったけれど、なんとなく一人で家にいたくなくて、外へと出た。
ぼーっとしているうちに辿り着いたのは、知らない街だった。
目的もなく、ただ気の赴くまま彷徨った。
私の足は、自然とまた別のビルの屋上へと昇っていた。