Bittersweet chocolate
貴方を好きでいるということ
「じゃあね、麗奈!」

「ん。また明日」

笑顔でブンブンと手を振ってくる杏里に手を振り返す。

終礼が終わると真っ先に帰っていく杏里。

彼女曰く、「放課後デート出来る貴重な時間なの!」だそうだ。

彼女が教室を出ていくのを見送ったあと、廊下から「小宮先輩!」と呼ぶ森下くんの声が響いてきた。

無事に会えたらしい。

いいなー、羨ましいなーとか思いながら、私も荷物を纏める。

席を立ち、教室を出ようとすると、後ろから「高坂! チョコ一個ぐらい分けてくれよ」という男子の声が聞こえた。

高坂の名前を聞き、思わず忘れ物確認する振りをして聞き耳をたてる。

「は? これ俺のなんだけど」

「いーじゃん一個ぐらい。だってお前めっちゃ貰ってんじゃん」

「お前も貰ってるだろ。ほら、それ」

「は!? これ愛薗からのお情けチョコ! 全員貰ってんじゃん! 義理チョコだから!」

「義理でも貰えるだけありがたいだろ。ゼロだったらお前泣いてたんじゃねーの?」

「な、泣くわけねーだろ!」

他の男子の、「去年こいつ誰にも貰えなかったからって涙目になってたぞー」という無情なツッコミにより、教室にドッと笑いが起こる

「お前ふざけんなよ~!?」

ツッコんだ奴に、涙目になって抗議する男子の姿が、憐れみを誘った。

……ドンマイ。

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