Bittersweet chocolate
「……」

黙々と手を動かして本の整理をしていると、私の思考はより深くへと潜りだす。

静かな空間。どこか壊してはいけないような静謐さに満ちたこの部屋が、そうさせるのだろうか。

誰にも邪魔されず考え事の出来るこの空間が、私は好きだった。

そうして仕事をしながら考え事をしていると、急に入口の方でガタン、と大きな音が鳴った。

「遅くなってすみません」

そう言いながら入ってきたのは、高坂。

「大丈夫よ、高坂くん」

高坂に聞こえるよう本棚の角から顔を出し、そう答えた先生。しばし逡巡した後、

「……そうね、麗奈ちゃん今持ってるものを最後にして、一旦カウンターの方へ戻りましょうか。長い間立ちっぱなしで疲れたでしょう?」

とそう言った。

その言葉を聞き、手に持っていた最後の一冊を本棚に戻した後、カウンターへと足を向ける。

カウンターの内側では、既に小林先生と高坂が座っていて、何やら楽しそうに談笑している。

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