期限付きとは言わせない
「榎っちおはよ〜!」
「おう!ていうか、『榎っち』と言うなと言ったよな?本名で呼べや、本名で」
「ごめんて、榎田」
俺は、クラス内で目立つほうで運動が得意だが、
勉強は、全くと言っていいほどできない。そして、今喋っているこいつは、昔からの幼馴染だ。名前は、木山燐といって俺とは正反対で、勉強ができるが運動が全くできないやつだ。
「あっ、そういえば、今日転校生が来るらしいぞ。かわいい女子だといいな」
「へ〜、それが…?」
「へ〜じゃなくて、もっと興味をもてよ。ていうか他人事みたいに言うな!」
「だってそうじゃん。俺には関係ないことだし」
そこで担任が入ってきてSHRが始まった。
「みんな着席したかー?早速だが転校生を紹介するぞー。じゃあ入ってこい」
クラスが「えっ?だれ」「イケメンがいいな」と、騒がしくなった。俺はさっきも言ったが興味がないためずっと下を向いていた。入り口から小さく「失礼します」という声が聞こえ担任の「じゃあ自己紹介よろしく」という言葉で一応どういう人か見ようと思い顔を上げた。
「森野咲といいます。よろしくお願いします」
そこで彼女と目があった。彼女の見た目は、眼鏡
の黒髪ロングだった。瞬間、体に電流が流れたように痺れ呼吸や、脈が速くなったのがわかった。俺は、目を逸らしてうなじを少しかいた。そしてそれが恋だと直感的にわかった。
しかし人を自分から好きになることがなかったた
め、どう告白すればいいのか分からず昼休みに壁ドンするかたちで、告白したが、
「なんであんたと付き合わないといけないのよ!」
と言われた挙げ句、ビンタまで食らわして彼女は、どっかに行ってしまった。
5限目、燐にこの事を話したら、爆笑しながら
「だからか、手の跡がついているのは」
「うるせーな!笑うなや」
そんな感じで放課後になり、次は真面目に告白してみたが、結局真面目に拒否された。その後、彼女は、すぐに帰ってしまったためその日は諦めることにした。
次の日も、その次の日も彼女に告白したが、
「私は、誰とも付き合う気はないから!」
と言われ続けた。
ある日の昼休み、彼女の方をふと見たら、いつも
通り教室の隅の席で小説を読んでいた。途中、クラスメイトに話しかけられていたが、そのクラスメイトは、すぐにどっかに行ってしまった。俺は、何気なく彼女の方に近づき、
「お前さ〜、ずっと一人で本を読んでいて楽しん
か?」
「楽しいよ?ていうか、今日は告白してこないん
だね」
「気になっただけ。それに小説のどこがおもしろ
いわけ?字ばっかだし」
「それは、小説の中の世界を頭の中で創造できる
のと、登場人物の心情が文字を通して伝わってくるところかな」
そんなふうに言う彼女の声は、いつもより明るか
った。俺は、無意識のうちにこう言っていた。
「なら、なんか小説貸して…、読んでみるから」
彼女は、少し面食らった顔をしていたが、了承してくれた。
「別にいいけど、折り曲げたりしないでね。あ
と、貸すのは明日でいい?」
「わかった」
その日、初めて彼女とれっきとした会話をした。
俺は、とても嬉しくて明日がとても楽しみになっていた。
翌日の放課後
「一応、あんたが読みやすそうな小説を選んでき
たつもり」
「おう!サンキューな!」
「これ読み終えたらもう私に関わらないでくれ
る?」
「え?なんで」
「私は誰とも関わりたくないと言ったでしょ!」
「え、でも、俺と関わってるじゃん。だから関係
ない!」
「だって…私…もうすぐ」
「どうした?」
「っ…何でもない」
彼女は、急に表情が曇ったかと思うと、また足早に去って行ってしまった。
取り残された俺は一つため息をつき、家に帰った。
その夜、何気なく貸してもらった本を手にとって読んでみた。そして、その本の面白さについハマってしまい、気がつくと次の日の朝になっていた。
「あっやべ。もうこんな時間!」
学校に着き、いつものように友達にあいさつをして彼女にもあいさつをした。すると、小さくだが、あいさつを返してくれた。俺は嬉しくなり顔がニヤけてしまった。その顔を見た彼女は、無表情で「キモい」とだけ言って、また本を読みだした。
昼休み、また一人で彼女は弁当を食べていた。俺はその様子を見かねて、燐に「今日はあいつと食ってくるわ」と言って彼女の前に座った。
「何しに来たの?」
「いや〜、お前が寂しそうだったから」
「すぐにどっか行って…」
「じゃあさ、なんか小説の話をしろよ、貸しても
らった本とても面白かったし」
すると、彼女は少し話に食いついてきた。
「私が思う小説の魅力は、小説を読むとその本の
主人公やヒロインになった気持ちになれるからいいの。あと、どんなに嫌なことあっても登場人物の言ったセリフに勇気や元気をもらえるわけ。だから私は小説が好きなの」
「そうなんだ。だから毎日小説を読んでいるんだ
な。あっそうだ!スマホ貸して!」
「これ?」
「そう!それ、ちょっと借りるぞ」
そう言ってスマホを借りて、自分のラインを彼女
のラインに登録した。
「え!ちょっと待って!何するの!」
「もういいよ。ホイ」
「あっ!ラインを勝手に入れてるし!」
「いや、お前さぁ、ずっと一人で寂しいよな。だ
から俺が楽しくさせるし悩みも聴いてやるからいつでもラインしてこいよな!」
「絶っ対にしないから!」
彼女は、そう言ったもののやっぱり悩みを聞いてほしかったのか、ごくたま〜にラインをしてきた。
そして、貸してもらった小説が、休日に読み終わ
ったため、彼女に連絡をした。すると、体調が悪いから家に来てということだった。住所を教えてもらい、本を返しに行った。玄関を出て右を見ると知っている人影があった。というか、彼女だった。
「体調が悪いなら無理しなくていいのに…」
「はっ?何言ってんの?ていうか…なんであんたと
家が隣なの?!」
「マジか!これは笑えるわ。お前が転入してきてから、1ヶ月も気づかなかったとわな!あと、小説サンキューな!」
「う…うん」
「じゃあ、また明日!」
そう言って家に入ろうとしたとき、
「まっ…待って!少し話があるの…」
と、彼女に呼び止められた。
「どうした?」
「いいから、私の家のリビングまで来て」
俺は躊躇したが、少し考え彼女の家にお邪魔する
ことにした。
「で、話は何やと?」
「えっと…私…実は病気…なの」
「じょ…、冗談だよな…」
「嘘ではないよ…。私の病気が見つかったのが中3の時で余命は、あと2ヶ月と言われているの。だからこれからも、今からも誰とも関わりるつもりわないの。だから、もう話しかけないでくる?」
俺はとても悔しかった。彼女に思ってもいない事を言わせることが…。
「……ってみろよ」
「どうしたの?」
「言ってみろよ!お前の本心を!思ってもいない
事を言うんじゃねーよ!」
すると、彼女の瞳から涙がこぼれ始めた。
「ほんとはとても寂しい!一人きりはもう嫌だ!」
「そうか、やっと本心を言ってくれた」
俺は、本心を言ってくれたことにとても安心した。
そこから先の彼女のセリフは、俺には意外なものだった。
「けど…そんな私を好きになってくれた!声もか
けてくれた…。そして、真っ先に気にかけてくれ
た。ホントは、とても嬉しかった。だから、付き合うのは無理でも友達ならいいよ」
「わかった…。こっちからは条件がある」
「何?」
「もっと明るく振舞え!あと眼鏡からコンタクト
に変えたほうがいいぞ…。カワイイから」
「わかった」
そう言った彼女の顔は少し紅くなっていた。
次の日からは、彼女は、まだぎこちないが明るく振る舞っていることや、コンタクトに変えたことでみちがえるほど可愛くなった。ちなみに髪は俺が切って整えてやった。
そして、彼女と話すことも多くなり、一緒に帰ることもしばしばあった。そしてある週の土曜日、彼女と俺と燐で遊ぶことになった。祭りで食べ歩きをしたあと映画館で、話題の映画を見ることになった。
その頃には、彼女と俺の壁はなくなっていた。俺と彼女の前なのでめちゃくちゃ気合いを入れておしゃれをしたが、他の2人は、ラフな服装できていた。俺の格好を見た二人は爆笑しながら、「「気合い入りすぎ!」」と言われてしまった。
「そんなに笑うなや!めちゃくちゃ恥ずかしいか
い」
「だって…、だって…」
「たくっ、二人して俺を馬鹿にして」
でも、内心とても嬉しかった。彼女の本当の笑顔が見れたから。
彼女は、クレープや、綿菓子を買って食べてた。俺はというと、リンゴ飴を食べながら彼女の方をずっと見ていた。
「何かついてる?」
「いや、たんに見ていただけ…」
そしてそのまま映画館に行き終了後、俺は楽しさ
の余韻に浸りながら彼女と一緒に帰路についてい
た。しかし、それは一瞬にして壊れた。
数歩先を歩いていた彼女が、ふらついたかと思う
とその場に崩れ落ちた。俺は病気の発作だとすぐにわかりすぐに駆け寄った。が、彼女から聞いていた処置を行おうとしたが、パニックになっていたため、手間取ってしまった。しかし、周りにいた人が、救急車を呼んでいたため彼女は、一命をとりとめた。
その後病院の待合室で、彼女の両親とあった。
「貴方が、榎田君かね?」
「はい…。そうです」
「私は、咲の父で、この人が、母です。よろしく」
「咲の病気のことを走ってるかね?」
「はい…。以前彼女から聞いていました。最初は、信じられなかったです。でも、それを理由に仲良くしないというのは俺的に寂しいですし、彼女は、学校で一人きりだったので話しかけたら、仲良くなりました」
「そうですか…。今回は、咲を助けていただきあ
りがとうございます。これからも仲良くしてやってください」
「分かりました」
その後は、彼女の両親と一緒に主治医の話を聞き彼女は一週間入院することになった。俺は彼女のためを思い、両親と主治医と一緒に口裏を合わせることにした。そして、彼女の病気を打ち明ける事を彼女の死後にすることにした。理由としては、
1 彼女に対して変な同情をされたくなかったこと
2 病気をネタに馬鹿にしてくる奴がいると思った
ことが挙げられたからだ。
月曜になり、彼女のいない一週間が始まった。2日後、
「あいつがいないと楽しくねぇな…」
そう言いながら休み時間にスマホを開いた。する
と、彼女からラインが届いていた。
[ごめ〜ん!心配かけたね…。あと、ありがとう
m(_ _)mだいぶ体調良くなって来ているから、ラインしてみた。気まで使わせちゃってなんか申し訳無いけど、けど安心して、このまま行けば、退院できるから。じゃあ、また今度!]
俺はいてもたってもいられなくなり屋上に行って電話をかけた。彼女は、すぐに出た。
『お?早速電話をかけてきたね』
「お前がいないと寂しいし、つまんないから」
『言ってくれるね〜!けど、こっちも、退屈で
さ〜』
「お前には、小説という名の好きなものがあるで
しょ?」
『けど、同じ本ばっかで飽きたんだよね…。なん
かいい本ある?』
「ん〜と…。あった!今俺が読んでる本があるか
ら退院したらあげるわ」
『ホント〜!やった〜!楽しみにしとくね』
「あぁ。俺も楽しみにしとくからな。あっやべぇ
休み時間が終わる!じゃあ、また、退院したとき」
『またね〜!』
それから5日後、彼女の退院日になった。彼女の
家に行こうと思い支度を始めたところで彼女からラインが来た。
[ごめん…。入院…延びた。私、こわい助けて]
俺は慌てて彼女の入院先の病院まで、とばしていった。
「大丈夫?!」
「あっ榎田君…。来てくれたんだ。うれしい」
そう言った彼女の顔は少しやつれていた。
「入院延びたって?!体調がまた悪くなったんか?」
「え…っと血液検査の値が異常で、あと吐き気
や、体が痛いしだるいのととてもキツイ」
「あっほら!前に言っていた本持ってきたから元気だせ」
このとき、俺はそうとう焦っていて本で病気が良くなるはずがないのに、そんなことを言っていた。しかも本を入れ忘れてた…。
「ごめん…。本を入れ忘れてた…」
「大丈…夫だから。今度…でもいいから…」
しかし、その今度は、結局現れなかった。彼女
は、次の日から昏睡状態に陥った。
「こんなとこで死なんよな…。本を持ってきてや
ったから、目を開けろよ…。なぁ…。開けてくれ
よ!咲!」
しかし、その声が届くことなく彼女は、10月3日に亡くなった。それから1ヶ月俺は自室に塞ぎ込んでしまった。そして学校にも行かなくなってしまった。
その間ずっと彼女とのラインのやり取りを見ながら泣いていた。
けど、俺よりも咲の家族の方が辛いということを思った。彼女の遺影にあいさつをしようとおもって彼女の家に行った。インターホンを鳴らすと父親が出てきた。
「ちょうどいいところに来た。榎田君に言いたい
ことと、渡したいものがあってね…」
「はい…」
「上がっていいぞ」
そう言った彼女の父親の背中が小さく、弱々しく
見えた。
「失礼します」
「単刀直入に言う」
「はい…」
俺は責められることを覚悟できていたか、彼女父
親から出た言葉は、予想外の言葉だった。
「本当にありがとう。私の娘が、最後まで笑顔で
いられたのはお前さんのおかげだ。感謝する!」
「え…?俺があのとき遊びに誘ったせいで咲さん
は、亡くなられたのに…。俺が感謝されていいはずがないですよね…。本当にごめんなさい!」
「いや、謝りたいのはこっちだよ…。あの日、娘
が、倒れたと聞いた時、凄くお前さんを恨んだ。けど、娘は違った。私にお前さんのいいところをたくさん教えてくれたりして、その時の笑顔が本を読んでる時と同じ笑顔なんだ」
「でも…俺は…」
言葉が続かなかった。すると、彼女の母親も来
て、
「しゃんとしなさい!あんたは、自負の念にとら
われているかもしれないけど、誰かの人生を幸せにしたことを誇りに思いなさい!あとこれ、彼女からの手紙、中は読んでないからできるなら読んでくれると嬉しいな」
その後遺影に手を合わせ自室に戻り手紙を読ん
だ。
【エノッチへ】
元気にしてる?私がいなくなってから学校に行かないとかありえないからね(笑)
私が転入してきた日のこと覚えてる?あの日、君が真っ先に声をかけてくれたよね。でもいきなり壁ドンで俺の彼女になれ!は、ビックリというか、正直ちょっと引いちゃった。でもあれから毎日告白してくるし、話しかけないでくれると言っても話しかけてくるからどうしようかと思っていたら、まさか、小説に興味を持ってくれたり、心配をしてくれたからとても嬉しかったの。実は私、自己紹介の時に君と目があったときに怖い人だと思ってた。けど、違った。君はとても純粋で、おもしろい人だと会話をしてわかったの。そういえば、一つお願いがあるの。それは、私の書きかけの物語を完結させてほしいの。あと、私が苦しいときに助けてくれてありがとう。
ほんとはね、私君のことが、
そこで手紙が終わっていた。俺は自分が壊れるとわかった。
「なんでいなくなるんだよ!俺はお前がいたから
楽しかったんだ。なのに、なのになんで咲が病気になって死ぬんだよ!もっと一緒にいたかった。出来るなら俺が変わってやりたかったよ!」
声と涙が涸れるまで泣き叫んでいた俺は、やっと平常心を取り戻し、封筒の中を見ると書きかけの原稿用紙が入っていた。読んでみるとそれは、僕と出会う内容の物語だった。
「分かったよ!この物語を完結させてやる。だから
咲は、天国で、ゆっくり見守っとけ!」
そう言った俺は、早速書き始めた。
「おう!ていうか、『榎っち』と言うなと言ったよな?本名で呼べや、本名で」
「ごめんて、榎田」
俺は、クラス内で目立つほうで運動が得意だが、
勉強は、全くと言っていいほどできない。そして、今喋っているこいつは、昔からの幼馴染だ。名前は、木山燐といって俺とは正反対で、勉強ができるが運動が全くできないやつだ。
「あっ、そういえば、今日転校生が来るらしいぞ。かわいい女子だといいな」
「へ〜、それが…?」
「へ〜じゃなくて、もっと興味をもてよ。ていうか他人事みたいに言うな!」
「だってそうじゃん。俺には関係ないことだし」
そこで担任が入ってきてSHRが始まった。
「みんな着席したかー?早速だが転校生を紹介するぞー。じゃあ入ってこい」
クラスが「えっ?だれ」「イケメンがいいな」と、騒がしくなった。俺はさっきも言ったが興味がないためずっと下を向いていた。入り口から小さく「失礼します」という声が聞こえ担任の「じゃあ自己紹介よろしく」という言葉で一応どういう人か見ようと思い顔を上げた。
「森野咲といいます。よろしくお願いします」
そこで彼女と目があった。彼女の見た目は、眼鏡
の黒髪ロングだった。瞬間、体に電流が流れたように痺れ呼吸や、脈が速くなったのがわかった。俺は、目を逸らしてうなじを少しかいた。そしてそれが恋だと直感的にわかった。
しかし人を自分から好きになることがなかったた
め、どう告白すればいいのか分からず昼休みに壁ドンするかたちで、告白したが、
「なんであんたと付き合わないといけないのよ!」
と言われた挙げ句、ビンタまで食らわして彼女は、どっかに行ってしまった。
5限目、燐にこの事を話したら、爆笑しながら
「だからか、手の跡がついているのは」
「うるせーな!笑うなや」
そんな感じで放課後になり、次は真面目に告白してみたが、結局真面目に拒否された。その後、彼女は、すぐに帰ってしまったためその日は諦めることにした。
次の日も、その次の日も彼女に告白したが、
「私は、誰とも付き合う気はないから!」
と言われ続けた。
ある日の昼休み、彼女の方をふと見たら、いつも
通り教室の隅の席で小説を読んでいた。途中、クラスメイトに話しかけられていたが、そのクラスメイトは、すぐにどっかに行ってしまった。俺は、何気なく彼女の方に近づき、
「お前さ〜、ずっと一人で本を読んでいて楽しん
か?」
「楽しいよ?ていうか、今日は告白してこないん
だね」
「気になっただけ。それに小説のどこがおもしろ
いわけ?字ばっかだし」
「それは、小説の中の世界を頭の中で創造できる
のと、登場人物の心情が文字を通して伝わってくるところかな」
そんなふうに言う彼女の声は、いつもより明るか
った。俺は、無意識のうちにこう言っていた。
「なら、なんか小説貸して…、読んでみるから」
彼女は、少し面食らった顔をしていたが、了承してくれた。
「別にいいけど、折り曲げたりしないでね。あ
と、貸すのは明日でいい?」
「わかった」
その日、初めて彼女とれっきとした会話をした。
俺は、とても嬉しくて明日がとても楽しみになっていた。
翌日の放課後
「一応、あんたが読みやすそうな小説を選んでき
たつもり」
「おう!サンキューな!」
「これ読み終えたらもう私に関わらないでくれ
る?」
「え?なんで」
「私は誰とも関わりたくないと言ったでしょ!」
「え、でも、俺と関わってるじゃん。だから関係
ない!」
「だって…私…もうすぐ」
「どうした?」
「っ…何でもない」
彼女は、急に表情が曇ったかと思うと、また足早に去って行ってしまった。
取り残された俺は一つため息をつき、家に帰った。
その夜、何気なく貸してもらった本を手にとって読んでみた。そして、その本の面白さについハマってしまい、気がつくと次の日の朝になっていた。
「あっやべ。もうこんな時間!」
学校に着き、いつものように友達にあいさつをして彼女にもあいさつをした。すると、小さくだが、あいさつを返してくれた。俺は嬉しくなり顔がニヤけてしまった。その顔を見た彼女は、無表情で「キモい」とだけ言って、また本を読みだした。
昼休み、また一人で彼女は弁当を食べていた。俺はその様子を見かねて、燐に「今日はあいつと食ってくるわ」と言って彼女の前に座った。
「何しに来たの?」
「いや〜、お前が寂しそうだったから」
「すぐにどっか行って…」
「じゃあさ、なんか小説の話をしろよ、貸しても
らった本とても面白かったし」
すると、彼女は少し話に食いついてきた。
「私が思う小説の魅力は、小説を読むとその本の
主人公やヒロインになった気持ちになれるからいいの。あと、どんなに嫌なことあっても登場人物の言ったセリフに勇気や元気をもらえるわけ。だから私は小説が好きなの」
「そうなんだ。だから毎日小説を読んでいるんだ
な。あっそうだ!スマホ貸して!」
「これ?」
「そう!それ、ちょっと借りるぞ」
そう言ってスマホを借りて、自分のラインを彼女
のラインに登録した。
「え!ちょっと待って!何するの!」
「もういいよ。ホイ」
「あっ!ラインを勝手に入れてるし!」
「いや、お前さぁ、ずっと一人で寂しいよな。だ
から俺が楽しくさせるし悩みも聴いてやるからいつでもラインしてこいよな!」
「絶っ対にしないから!」
彼女は、そう言ったもののやっぱり悩みを聞いてほしかったのか、ごくたま〜にラインをしてきた。
そして、貸してもらった小説が、休日に読み終わ
ったため、彼女に連絡をした。すると、体調が悪いから家に来てということだった。住所を教えてもらい、本を返しに行った。玄関を出て右を見ると知っている人影があった。というか、彼女だった。
「体調が悪いなら無理しなくていいのに…」
「はっ?何言ってんの?ていうか…なんであんたと
家が隣なの?!」
「マジか!これは笑えるわ。お前が転入してきてから、1ヶ月も気づかなかったとわな!あと、小説サンキューな!」
「う…うん」
「じゃあ、また明日!」
そう言って家に入ろうとしたとき、
「まっ…待って!少し話があるの…」
と、彼女に呼び止められた。
「どうした?」
「いいから、私の家のリビングまで来て」
俺は躊躇したが、少し考え彼女の家にお邪魔する
ことにした。
「で、話は何やと?」
「えっと…私…実は病気…なの」
「じょ…、冗談だよな…」
「嘘ではないよ…。私の病気が見つかったのが中3の時で余命は、あと2ヶ月と言われているの。だからこれからも、今からも誰とも関わりるつもりわないの。だから、もう話しかけないでくる?」
俺はとても悔しかった。彼女に思ってもいない事を言わせることが…。
「……ってみろよ」
「どうしたの?」
「言ってみろよ!お前の本心を!思ってもいない
事を言うんじゃねーよ!」
すると、彼女の瞳から涙がこぼれ始めた。
「ほんとはとても寂しい!一人きりはもう嫌だ!」
「そうか、やっと本心を言ってくれた」
俺は、本心を言ってくれたことにとても安心した。
そこから先の彼女のセリフは、俺には意外なものだった。
「けど…そんな私を好きになってくれた!声もか
けてくれた…。そして、真っ先に気にかけてくれ
た。ホントは、とても嬉しかった。だから、付き合うのは無理でも友達ならいいよ」
「わかった…。こっちからは条件がある」
「何?」
「もっと明るく振舞え!あと眼鏡からコンタクト
に変えたほうがいいぞ…。カワイイから」
「わかった」
そう言った彼女の顔は少し紅くなっていた。
次の日からは、彼女は、まだぎこちないが明るく振る舞っていることや、コンタクトに変えたことでみちがえるほど可愛くなった。ちなみに髪は俺が切って整えてやった。
そして、彼女と話すことも多くなり、一緒に帰ることもしばしばあった。そしてある週の土曜日、彼女と俺と燐で遊ぶことになった。祭りで食べ歩きをしたあと映画館で、話題の映画を見ることになった。
その頃には、彼女と俺の壁はなくなっていた。俺と彼女の前なのでめちゃくちゃ気合いを入れておしゃれをしたが、他の2人は、ラフな服装できていた。俺の格好を見た二人は爆笑しながら、「「気合い入りすぎ!」」と言われてしまった。
「そんなに笑うなや!めちゃくちゃ恥ずかしいか
い」
「だって…、だって…」
「たくっ、二人して俺を馬鹿にして」
でも、内心とても嬉しかった。彼女の本当の笑顔が見れたから。
彼女は、クレープや、綿菓子を買って食べてた。俺はというと、リンゴ飴を食べながら彼女の方をずっと見ていた。
「何かついてる?」
「いや、たんに見ていただけ…」
そしてそのまま映画館に行き終了後、俺は楽しさ
の余韻に浸りながら彼女と一緒に帰路についてい
た。しかし、それは一瞬にして壊れた。
数歩先を歩いていた彼女が、ふらついたかと思う
とその場に崩れ落ちた。俺は病気の発作だとすぐにわかりすぐに駆け寄った。が、彼女から聞いていた処置を行おうとしたが、パニックになっていたため、手間取ってしまった。しかし、周りにいた人が、救急車を呼んでいたため彼女は、一命をとりとめた。
その後病院の待合室で、彼女の両親とあった。
「貴方が、榎田君かね?」
「はい…。そうです」
「私は、咲の父で、この人が、母です。よろしく」
「咲の病気のことを走ってるかね?」
「はい…。以前彼女から聞いていました。最初は、信じられなかったです。でも、それを理由に仲良くしないというのは俺的に寂しいですし、彼女は、学校で一人きりだったので話しかけたら、仲良くなりました」
「そうですか…。今回は、咲を助けていただきあ
りがとうございます。これからも仲良くしてやってください」
「分かりました」
その後は、彼女の両親と一緒に主治医の話を聞き彼女は一週間入院することになった。俺は彼女のためを思い、両親と主治医と一緒に口裏を合わせることにした。そして、彼女の病気を打ち明ける事を彼女の死後にすることにした。理由としては、
1 彼女に対して変な同情をされたくなかったこと
2 病気をネタに馬鹿にしてくる奴がいると思った
ことが挙げられたからだ。
月曜になり、彼女のいない一週間が始まった。2日後、
「あいつがいないと楽しくねぇな…」
そう言いながら休み時間にスマホを開いた。する
と、彼女からラインが届いていた。
[ごめ〜ん!心配かけたね…。あと、ありがとう
m(_ _)mだいぶ体調良くなって来ているから、ラインしてみた。気まで使わせちゃってなんか申し訳無いけど、けど安心して、このまま行けば、退院できるから。じゃあ、また今度!]
俺はいてもたってもいられなくなり屋上に行って電話をかけた。彼女は、すぐに出た。
『お?早速電話をかけてきたね』
「お前がいないと寂しいし、つまんないから」
『言ってくれるね〜!けど、こっちも、退屈で
さ〜』
「お前には、小説という名の好きなものがあるで
しょ?」
『けど、同じ本ばっかで飽きたんだよね…。なん
かいい本ある?』
「ん〜と…。あった!今俺が読んでる本があるか
ら退院したらあげるわ」
『ホント〜!やった〜!楽しみにしとくね』
「あぁ。俺も楽しみにしとくからな。あっやべぇ
休み時間が終わる!じゃあ、また、退院したとき」
『またね〜!』
それから5日後、彼女の退院日になった。彼女の
家に行こうと思い支度を始めたところで彼女からラインが来た。
[ごめん…。入院…延びた。私、こわい助けて]
俺は慌てて彼女の入院先の病院まで、とばしていった。
「大丈夫?!」
「あっ榎田君…。来てくれたんだ。うれしい」
そう言った彼女の顔は少しやつれていた。
「入院延びたって?!体調がまた悪くなったんか?」
「え…っと血液検査の値が異常で、あと吐き気
や、体が痛いしだるいのととてもキツイ」
「あっほら!前に言っていた本持ってきたから元気だせ」
このとき、俺はそうとう焦っていて本で病気が良くなるはずがないのに、そんなことを言っていた。しかも本を入れ忘れてた…。
「ごめん…。本を入れ忘れてた…」
「大丈…夫だから。今度…でもいいから…」
しかし、その今度は、結局現れなかった。彼女
は、次の日から昏睡状態に陥った。
「こんなとこで死なんよな…。本を持ってきてや
ったから、目を開けろよ…。なぁ…。開けてくれ
よ!咲!」
しかし、その声が届くことなく彼女は、10月3日に亡くなった。それから1ヶ月俺は自室に塞ぎ込んでしまった。そして学校にも行かなくなってしまった。
その間ずっと彼女とのラインのやり取りを見ながら泣いていた。
けど、俺よりも咲の家族の方が辛いということを思った。彼女の遺影にあいさつをしようとおもって彼女の家に行った。インターホンを鳴らすと父親が出てきた。
「ちょうどいいところに来た。榎田君に言いたい
ことと、渡したいものがあってね…」
「はい…」
「上がっていいぞ」
そう言った彼女の父親の背中が小さく、弱々しく
見えた。
「失礼します」
「単刀直入に言う」
「はい…」
俺は責められることを覚悟できていたか、彼女父
親から出た言葉は、予想外の言葉だった。
「本当にありがとう。私の娘が、最後まで笑顔で
いられたのはお前さんのおかげだ。感謝する!」
「え…?俺があのとき遊びに誘ったせいで咲さん
は、亡くなられたのに…。俺が感謝されていいはずがないですよね…。本当にごめんなさい!」
「いや、謝りたいのはこっちだよ…。あの日、娘
が、倒れたと聞いた時、凄くお前さんを恨んだ。けど、娘は違った。私にお前さんのいいところをたくさん教えてくれたりして、その時の笑顔が本を読んでる時と同じ笑顔なんだ」
「でも…俺は…」
言葉が続かなかった。すると、彼女の母親も来
て、
「しゃんとしなさい!あんたは、自負の念にとら
われているかもしれないけど、誰かの人生を幸せにしたことを誇りに思いなさい!あとこれ、彼女からの手紙、中は読んでないからできるなら読んでくれると嬉しいな」
その後遺影に手を合わせ自室に戻り手紙を読ん
だ。
【エノッチへ】
元気にしてる?私がいなくなってから学校に行かないとかありえないからね(笑)
私が転入してきた日のこと覚えてる?あの日、君が真っ先に声をかけてくれたよね。でもいきなり壁ドンで俺の彼女になれ!は、ビックリというか、正直ちょっと引いちゃった。でもあれから毎日告白してくるし、話しかけないでくれると言っても話しかけてくるからどうしようかと思っていたら、まさか、小説に興味を持ってくれたり、心配をしてくれたからとても嬉しかったの。実は私、自己紹介の時に君と目があったときに怖い人だと思ってた。けど、違った。君はとても純粋で、おもしろい人だと会話をしてわかったの。そういえば、一つお願いがあるの。それは、私の書きかけの物語を完結させてほしいの。あと、私が苦しいときに助けてくれてありがとう。
ほんとはね、私君のことが、
そこで手紙が終わっていた。俺は自分が壊れるとわかった。
「なんでいなくなるんだよ!俺はお前がいたから
楽しかったんだ。なのに、なのになんで咲が病気になって死ぬんだよ!もっと一緒にいたかった。出来るなら俺が変わってやりたかったよ!」
声と涙が涸れるまで泣き叫んでいた俺は、やっと平常心を取り戻し、封筒の中を見ると書きかけの原稿用紙が入っていた。読んでみるとそれは、僕と出会う内容の物語だった。
「分かったよ!この物語を完結させてやる。だから
咲は、天国で、ゆっくり見守っとけ!」
そう言った俺は、早速書き始めた。