お嬢様と羊
お嬢様に出逢う
「初めまして、本日より陽葵様の執事を仰せつかりました━━━━」
「は?羊?」
引っ越しの準備をしていた陽葵。
バッと顔を上げ、答えた。

「あ、いえ…羊ではなく、執事です。
星野 一弥と申します」
「私、頼んでない」
「しかし、今日から陽葵様は一人暮らしをされるんですよね?
それにあたり、旦那様より陽葵様のお世話をする様に仰せつかってます」


喜多川 陽葵。
喜多川電力グループ、ご令嬢にして“美しき光の姫”と呼ばれている。
それは容姿端麗でおしとやかな女性。
電力会社の姫であるからだ。

このお嬢様、現会長・喜多川 大志の一人娘で溺愛されて育った為“かなり”ワガママである。
しかも口がかなり悪く、お嬢様とは程遠い人物だ。


「はぁぁ?やっとパパや使用人から離れられるのにぃ!羊がいたら、自由にできないじゃん!」
「ですから、羊ではなく執事です。
せめて人間扱いして下さい!」
「うっせー、羊!」

「あの」
「何!?」
「クビ覚悟で申し上げます」
「あ?」
「いい加減にしろ!?
この猫かぶり女!!!
こっちだって、なりたくてなったんじゃねぇんだよ!?」

「………」
「はぁはぁ……
失礼致しました。
旦那様には、陽葵様よりクビを言い渡されたとお伝えしておきます。
あ、もちろん…僕の失態で」
そう言って、ドアに向かう一弥。

「待って!」
「は?」
「もしかして、あなた…あの時の…?」
「え?」

「それに、初めて!私にそんな口聞く人!
嬉しい!
…………いいわ、私の執事になって!
一弥!」



これが、猫かぶりお嬢様と年下執事の出逢いである。
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