お嬢様と羊
「秀人…」
「ん?陽葵?」

「………はっ!ごめん!どうしても、重なる…」
「似てる?秀人さんと」
「うん…煙草を吸う姿がね……」
切なく微笑み俯く、陽葵。

「……なんか、複雑だな…」
「え?」
一弥の呟きに、陽葵が一弥を見た。

「秀人さんに似てるってのはめっちゃ嬉しいんだけど、陽葵には俺だけを見ててほしいなって……!」
「フフ…一弥、可愛い~」
「は?可愛いって言うな!」
「ごめんね、なるべく秀人の名前出さないようにするわ!
嫌よね?自分以外の男性の名前出されるの……」
ふわりと笑う陽葵。

「ううん。いいんだよ、秀人さんに似てるって言われるの、ほんと嬉しいから!
憧れの人だしな!」
「そう?私は嫌よ!私以外の女性の名前出されるの」
キッと一弥を睨みつける。

「は?秀人さん“は!”って言ってんだろ?
秀人さん以外はダメだよ!!当たり前だろ!?」
「そう」
「そうだよ!てか、あの九重って奴何者?」
「は?突然何?」
「聞こうと思って、忘れてたんだよ!?」
「九重ジュエリーの息子さんよ!
九重 圭介さん。一応、婚約者よ!」
淡々と話す、陽葵。

「婚約者!!?マジかよ!?」
「そうよ、パパ達が盛り上がってるだけだけど…!
あ、でも安心して?
私はその気、さらさらないから!」
微笑む陽葵は、更に話を続ける。

「一弥、約束してくれたでしょ?
“一人にしない”って!
だから、私も一弥を一人にしない!!
約束よ!」
そう言って、小指を出した陽葵。

「うん…約束……!」
一弥も小指を出し、絡めたのだった。
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