お嬢様と羊

お嬢様の友人

｢へぇー、コイツが？｣
｢うん、恋人の星野 一弥。仲良くしてあげて？
あ、でも！パパには内緒だから！
パパの前では、羊なの｣
｢羊？｣
後日、陽葵は秀人の親友の佳輝や秀人の仲間、友人達に一弥を紹介する為にあるバーに来ていた。

ここは秀人の仲間・陸朗の経営するバーだ。

｢俺は、陸朗。
ここの経営者。
コイツが、佳輝｣
｢初めまして。陽葵の恋人で“執事の”星野 一弥です｣
一弥が丁寧に挨拶する。

｢陽葵、やっと前を向けそうか？｣
佳輝が心配そうに、陽葵の顔を覗き込む。
｢うん、大丈夫よ。
一弥ね、秀人のこと知ってたの。憧れてるんだって！｣
｢へぇー、秀人を……てことは、お前…｣
｢はい。俺達の憧れです！｣
佳輝が一弥に向き直り、真っ直ぐ見据え何かを悟る。
その視線を真っ直ぐ受け止める、一弥。

｢アンタに、陽葵を守れるの？｣
佳輝の横に座っていた、陽葵の親友の光希が一弥に言い放った。
｢はい。絶対に一人にしない！って約束しました｣
｢陽葵は、猫よ！｣
｢は？｣
｢猫かぶり姫。甘やかされて育ったから、ワガママで自由なお嬢様よ。
だから、秀人も死んだの。
陽葵が敵の言動にキレて、一人で勝手に向かって行ったから。
その陽葵を守ろうとして、秀人は車に轢かれたの｣
｢光希！もう、その話はなしだろ！？
誰のせいでもない！｣
光希の言葉に、佳輝が諭す。

｢は？陽葵のせいなんて言ってないでしょ？
秀人の自業自得よ！
秀人や佳輝が無理するから、陽葵が心配して駆けつけたんだから！｣
｢そうだな……｣
光希と佳輝の言い合いに、その場が張りつめた。

｢俺は陽葵を置いて、死にません！｣
その張りつめたバー内に、一弥の一声が響いた。