お嬢様と羊

一弥はただ黙って佳輝の話を聞いていた。

｢一弥…｣
｢俺は……｣
｢別れるなんて言わないわよね？｣
｢ごめん…陽葵｣

｢はぁ？まさか……本気？｣
｢………｣
｢羊！！お前、もう約束破るの！？｣


｢俺は…放れない！！陽葵から、絶対に！！
陽葵は俺の女だ！！
佳輝さん、俺はもし死ぬようなことがあったら……
“本気で”陽葵を連れて逝きます！
約束したからじゃない！
もう…俺が………陽葵がいないと生きていけないんだ……！
これでもずっと、気持ちを抑えてた。
俺なんかほんとは、陽葵に触れちゃいけないって思ってたから。
でも思いが通じて、触れたらもう…歯止めがきかない！｣
｢一弥…お前……｣
一弥の真っ直ぐな想い。

｢一弥？｣
｢ごめんね、陽葵。
きっと何があっても、放してあげられない。
俺はもう……陽葵の傍じゃないと幸せになれない｣
｢うん、私も一弥から放れないよ！｣
一弥の頭を撫でる陽葵。

｢はぁー、わかったよ！
一弥、お前には負けたよ…！｣
佳輝がため息をつき、一弥の肩に手を乗せた。
｢佳輝さん…｣
｢今の言葉、忘れるなよ！羊！｣
｢はい！
………って…羊はやめてください！｣
｢フフ…でも、羊じゃん！一弥｣
｢羊だな｣

｢陽葵は羊って言ってもいいが、それ以外の人間は言わせない！｣
｢プッ…！可愛い～！一弥｣

｢可愛いって言うな！！｣