お嬢様と羊
「それはこっちのセリフよ!
ママなら……ママが生きてたら、こんな風に私を縛りつけないわ!」
「陽葵」
「何よ」
「お前を、もう…ここから出さない!」
「は?」
「お前は、九重くんと結婚するんだ」
「嫌よ!」

「ママが望んでたことでも?」
大志の言葉が響く。

「え……」
「陽葵さん、君の母上と僕の母が親友なのは知ってますよね?」
「え、えぇ…」
「母達の間では、お互いの子どもが将来夫婦になったらいいと話してたんですよ。
でも貴方が大上に惚れたから、僕は引き下がった。
大上は君の幼なじみだったから。
でも今は大上はいない。だったら、僕が引き下がる必要はない。
…………あと、もう一つ。
決定的なことを教えますね!」
「な、何よ!?」

「僕は、大上に貴女を託されています」

「え……秀人に?」
「大上が僕のとこに会いに来て“俺は陽葵の前では、絶対に暴力はふるわない。
だからもしかしたら、死ぬかもしれない。
その時は、お前に陽葵を託したい”って!」
「嘘…でしょ…!?」
「僕は、大上と陽葵さんの二人が好きでした。
相思相愛で、幸せそうで。
あの冷酷な大上が、貴女の前では優しく微笑みけっして暴力をふるわない。
だから、僕は引き下がったんです。
お義父様にも僕が説得しました。
大上なら、陽葵さんを幸せにできるって。
陽葵さん、僕は大上に託されている以上、諦めるつもりはありません!」

「どうして…今、そんなこと言うの…?
なんで、今更、秀人の名前を出してくるの?
私はもう……一弥しか……」

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