恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
***
クライアントとのランチミーティングが早めに終わり、戻ってきたら会社の近くで莉佐を見かけた。
外は猛暑だというのに、路上で女性と立ち話をしている。
誰か知り合いにでも会ったのだろうか、などと最初は悠長に考えていたけれど、莉佐の表情が明らかに暗いことに気づいた。
そして、対峙している相手にも見覚えがある。保科梓だ。
ふたりが親友だったのは高校生のころの話で、仲たがいをしたまま今は完全に縁が切れたと莉佐からは聞いている。
そんなふたりがこんな場所で待ち合わせるわけがないし、偶然ばったり会うこともないだろう。
いろいろ考えを巡らせていると、梓がなにか莉佐に言い、攻撃的に肩を小突いたのが見えた。
これはまずい、とふたりの元へ駆け出した瞬間、梓がもう一度肩を強く突いたため莉佐が二歩ほど後ろによろけた。
莉佐は決してやり返さない。そういう性格だ。だけど傍から見れば、これは立派な“喧嘩”だろう。
それに、今のふたりが言い争う話の内容は、きっと俺に関係しているはずだ。
「唯人さんを、私に返せ!!」
ふたりに駆け寄っていく途中、梓の叫び声が耳に届いた。
顔を真っ赤にして莉佐を睨みつけながら絶叫する姿は、俺の知る梓ではなかった。まるで別人だ。
今まではきっと、俺の前では良い顔だけを見せていたのだろう。
梓が感情に任せて莉佐を叩こうとした瞬間、俺はその手首を捕まえて阻止をした。
梓は俺が割って入ったことに驚いてうろたえていたが、掴んだ手首を易々と離すわけにはいかない。離した途端に莉佐につかみかかるかもしれないからだ。
クライアントとのランチミーティングが早めに終わり、戻ってきたら会社の近くで莉佐を見かけた。
外は猛暑だというのに、路上で女性と立ち話をしている。
誰か知り合いにでも会ったのだろうか、などと最初は悠長に考えていたけれど、莉佐の表情が明らかに暗いことに気づいた。
そして、対峙している相手にも見覚えがある。保科梓だ。
ふたりが親友だったのは高校生のころの話で、仲たがいをしたまま今は完全に縁が切れたと莉佐からは聞いている。
そんなふたりがこんな場所で待ち合わせるわけがないし、偶然ばったり会うこともないだろう。
いろいろ考えを巡らせていると、梓がなにか莉佐に言い、攻撃的に肩を小突いたのが見えた。
これはまずい、とふたりの元へ駆け出した瞬間、梓がもう一度肩を強く突いたため莉佐が二歩ほど後ろによろけた。
莉佐は決してやり返さない。そういう性格だ。だけど傍から見れば、これは立派な“喧嘩”だろう。
それに、今のふたりが言い争う話の内容は、きっと俺に関係しているはずだ。
「唯人さんを、私に返せ!!」
ふたりに駆け寄っていく途中、梓の叫び声が耳に届いた。
顔を真っ赤にして莉佐を睨みつけながら絶叫する姿は、俺の知る梓ではなかった。まるで別人だ。
今まではきっと、俺の前では良い顔だけを見せていたのだろう。
梓が感情に任せて莉佐を叩こうとした瞬間、俺はその手首を捕まえて阻止をした。
梓は俺が割って入ったことに驚いてうろたえていたが、掴んだ手首を易々と離すわけにはいかない。離した途端に莉佐につかみかかるかもしれないからだ。