恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
「梓さんと知り合った経緯は、以前に健吾も一緒にいたときに話したとおりだ。スマホを壊した謝罪の意味でのプレゼントを渡して、俺の中ではそれで終わりのはずだったが、そのあとも彼女からメッセージはずっと来ていた」
私は静かにうなずいて、彼の話の続きに耳を傾けた。
「俺は莉佐を好きになり、彼女にはもう連絡しないと告げた。莉佐と付き合ってから俺がメッセージを送ったことは一度もない。だけど彼女は狂気的だった」
「……わかります。梓は強引なところがあるので」
梓の固執する性格は“自己中心的”だとか“押しが強い”といった表現では済まない部分がある。唯人さんが口にした“狂気的”という言葉が合っている。
「時が経てばいずれ諦めると思った。まったく脈のない俺に執着する意味はないだろう、と。だけど半年経ってもなにも変わらない。この前、莉佐の部屋にいたときにもスマホが鳴っただろ?」
「あれもそうだったんですか……」
唯人さんがうちに泊まりに来た日、たしかに食事中にメッセージが来ていた。
彼はチラリと画面を見て、誰からなのか相手を確認だけしてそのまま放置していたのを覚えている。
「まさか彼女がこんな行動に出るとは思わなかった。放っておかずに俺が話してきちんとけりをつけていれば、莉佐に危害を加えることは……」
「いいえ。梓ならどのみち私の所へ来ます」
私は静かにうなずいて、彼の話の続きに耳を傾けた。
「俺は莉佐を好きになり、彼女にはもう連絡しないと告げた。莉佐と付き合ってから俺がメッセージを送ったことは一度もない。だけど彼女は狂気的だった」
「……わかります。梓は強引なところがあるので」
梓の固執する性格は“自己中心的”だとか“押しが強い”といった表現では済まない部分がある。唯人さんが口にした“狂気的”という言葉が合っている。
「時が経てばいずれ諦めると思った。まったく脈のない俺に執着する意味はないだろう、と。だけど半年経ってもなにも変わらない。この前、莉佐の部屋にいたときにもスマホが鳴っただろ?」
「あれもそうだったんですか……」
唯人さんがうちに泊まりに来た日、たしかに食事中にメッセージが来ていた。
彼はチラリと画面を見て、誰からなのか相手を確認だけしてそのまま放置していたのを覚えている。
「まさか彼女がこんな行動に出るとは思わなかった。放っておかずに俺が話してきちんとけりをつけていれば、莉佐に危害を加えることは……」
「いいえ。梓ならどのみち私の所へ来ます」