恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
「茉梨さん……」
秋本さんを下の名前で呼ぶ健吾さんの声は、いたたまれないような気持ちが混ざっている。
「今ね、健吾さんを副社長室にご案内するところだったのよ」
案内もなにも、副社長室の場所なら健吾さんは何度も訪れているので当然わかっている。
なにかはぐらかされた感じがして仕方ないけれど、詳細はあとで秋本さんに聞けばいいことなので、私は一旦彼女の言葉を受け止めて健吾さんに笑顔で会釈をした。
「茉梨さん、そんなに怒らないでよ。俺のせいじゃないし」
「わかっています。怒っていませんので」
そのまま健吾さんが副社長室に向かってくれれば、この場はこれで済んだはずなのに、納得がいかないのか彼はふたたび秋本さんに絡んだ。
それに対しすぐさま反論した秋本さんは、私から見ても声が怒っていて、発した言葉と内容が全然合っていない。
「どうしたんですか、ふたりとも……」
これ以上揉めさせるわけにはいかないと、ふたりの間に割って入れば健吾さんが眉をひそめた。
いつも楽天的で飄々としている健吾さんには珍しい表情なので、彼自身もだんだんイラついてきた可能性が高い。
秋本さんを下の名前で呼ぶ健吾さんの声は、いたたまれないような気持ちが混ざっている。
「今ね、健吾さんを副社長室にご案内するところだったのよ」
案内もなにも、副社長室の場所なら健吾さんは何度も訪れているので当然わかっている。
なにかはぐらかされた感じがして仕方ないけれど、詳細はあとで秋本さんに聞けばいいことなので、私は一旦彼女の言葉を受け止めて健吾さんに笑顔で会釈をした。
「茉梨さん、そんなに怒らないでよ。俺のせいじゃないし」
「わかっています。怒っていませんので」
そのまま健吾さんが副社長室に向かってくれれば、この場はこれで済んだはずなのに、納得がいかないのか彼はふたたび秋本さんに絡んだ。
それに対しすぐさま反論した秋本さんは、私から見ても声が怒っていて、発した言葉と内容が全然合っていない。
「どうしたんですか、ふたりとも……」
これ以上揉めさせるわけにはいかないと、ふたりの間に割って入れば健吾さんが眉をひそめた。
いつも楽天的で飄々としている健吾さんには珍しい表情なので、彼自身もだんだんイラついてきた可能性が高い。