恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
しばらく時間が経ち、私の知らないあいだに健吾さんは副社長と話を終えて帰ったらしい。
すぐに副社長室へ呼び出されるのではないかと予想していたけれど、意外にも私への内線の電話は入らないままだ。
気になりつつも自分の仕事に集中していると、私は深沢部長に呼ばれた。
「今、奥様が来られて社長室にいらっしゃる。社長と副社長も一緒だ。すまないが三人分のお茶を出してもらえないか」
「承知しました」
「奥様が、海老原さんに持ってこさせてほしいとのことだ」
誰がお茶出ししても構わないのに、わざわざ私が指名されたみたいだ。
なにか社長とお母様の耳に届いたのだろうか。もしかしたら先ほどの健吾さんの話も関係しているのかもしれない。
「あの、部長……」
「ん? あ、例の件は僕からは伝えていないから」
“例の件”とは、唯人さんと私の交際の件だ。
小さな声だとしても誰に聞かれるかわからないので、深沢部長が気を使ってくれているのがわかる。
すぐに副社長室へ呼び出されるのではないかと予想していたけれど、意外にも私への内線の電話は入らないままだ。
気になりつつも自分の仕事に集中していると、私は深沢部長に呼ばれた。
「今、奥様が来られて社長室にいらっしゃる。社長と副社長も一緒だ。すまないが三人分のお茶を出してもらえないか」
「承知しました」
「奥様が、海老原さんに持ってこさせてほしいとのことだ」
誰がお茶出ししても構わないのに、わざわざ私が指名されたみたいだ。
なにか社長とお母様の耳に届いたのだろうか。もしかしたら先ほどの健吾さんの話も関係しているのかもしれない。
「あの、部長……」
「ん? あ、例の件は僕からは伝えていないから」
“例の件”とは、唯人さんと私の交際の件だ。
小さな声だとしても誰に聞かれるかわからないので、深沢部長が気を使ってくれているのがわかる。