恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
唯人さんは元々、政略結婚は絶対にしないと心に決めていた。
結麻さんも唯人さんの気持ちを理解し、親の会社のためだという理由で自分を犠牲にしてはならないと気づいて、結婚話を白紙に戻したみたいだ。
「とにかく海老原さん、あなたは唯人と別れて。結麻さんがダメでも、私が別の人をまた探すから」
私は三人が座るソファーの下座の位置で立ったままずっと話を聞いていたが、こんなときに限って気分が悪くなってきた。つわりが襲ってきたようだ。
「なぜ黙ってるの? 顔も青白いし、この状況が怖くなった?」
「すみません……」
話の途中なのは重々承知していたものの、お手洗いに行くために退席したくて言葉を絞り出した。突然無言で部屋を飛び出すのは無礼極まりないからだ。
だけど口を開いた瞬間、胃からこみ上げてくるものがあり、「うっ」と声に出てしまって思わず手で口元を隠した。
「体調が悪いの?……あなた、もしかしてそれ、つわりじゃないでしょうね!」
「え?!」
誰よりも早くお母様の言葉に反応した唯人さんがあわてて立ち上がり、私のそばまで来て背中をさすった。
お母様の勘の良さは、さすがとしか言いようがない。
結麻さんも唯人さんの気持ちを理解し、親の会社のためだという理由で自分を犠牲にしてはならないと気づいて、結婚話を白紙に戻したみたいだ。
「とにかく海老原さん、あなたは唯人と別れて。結麻さんがダメでも、私が別の人をまた探すから」
私は三人が座るソファーの下座の位置で立ったままずっと話を聞いていたが、こんなときに限って気分が悪くなってきた。つわりが襲ってきたようだ。
「なぜ黙ってるの? 顔も青白いし、この状況が怖くなった?」
「すみません……」
話の途中なのは重々承知していたものの、お手洗いに行くために退席したくて言葉を絞り出した。突然無言で部屋を飛び出すのは無礼極まりないからだ。
だけど口を開いた瞬間、胃からこみ上げてくるものがあり、「うっ」と声に出てしまって思わず手で口元を隠した。
「体調が悪いの?……あなた、もしかしてそれ、つわりじゃないでしょうね!」
「え?!」
誰よりも早くお母様の言葉に反応した唯人さんがあわてて立ち上がり、私のそばまで来て背中をさすった。
お母様の勘の良さは、さすがとしか言いようがない。