恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
「夜、会食されるのでしたらお店の予約をしますか?」
「いや、いい。それよりも……」
副社長は苦虫を噛み潰したような表情のままこちらを向き、私と目が合った瞬間、言葉を発するのを一瞬ためらった。
「ゲストをひとり連れてくるらしいから、パスの手配を頼む」
「お客様ですか。わかりました」
私はバッグからスマホを取り出し、会社の正面玄関を入ってすぐにある受付への直通番号へ電話をかけた。
受付ですみやかにゲストパスを渡さなければ、入退館ゲートがあるため社内に入れないからだ。
社長夫人が招いたお客様なのに、話が通っていないというような不格好な応対は絶対に許されない。
「私、社長の奥様にお目にかかるのは初めてなので、少し緊張します」
電話を切ったあとにポツリとひとりごとのように言葉を漏らしたけれど、副社長は難しい顔をしたまま窓の外に視線を向けていた。
副社長のお母様は会社の役員だが名前だけ連ねている状態なので、会社に顔を出すことはほとんどないと秋本さんから以前聞いたことがある。たしかに私が秘書になってからはこれが初めてだ。
「それと、スタジオのスタッフにも連絡を。ゲストが見学したいそうだ」
「あ、はい」
「いや、いい。それよりも……」
副社長は苦虫を噛み潰したような表情のままこちらを向き、私と目が合った瞬間、言葉を発するのを一瞬ためらった。
「ゲストをひとり連れてくるらしいから、パスの手配を頼む」
「お客様ですか。わかりました」
私はバッグからスマホを取り出し、会社の正面玄関を入ってすぐにある受付への直通番号へ電話をかけた。
受付ですみやかにゲストパスを渡さなければ、入退館ゲートがあるため社内に入れないからだ。
社長夫人が招いたお客様なのに、話が通っていないというような不格好な応対は絶対に許されない。
「私、社長の奥様にお目にかかるのは初めてなので、少し緊張します」
電話を切ったあとにポツリとひとりごとのように言葉を漏らしたけれど、副社長は難しい顔をしたまま窓の外に視線を向けていた。
副社長のお母様は会社の役員だが名前だけ連ねている状態なので、会社に顔を出すことはほとんどないと秋本さんから以前聞いたことがある。たしかに私が秘書になってからはこれが初めてだ。
「それと、スタジオのスタッフにも連絡を。ゲストが見学したいそうだ」
「あ、はい」