恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
今日もスタジオからショッピングチャンネルの生放送がある。
副社長の指示通り、見学希望者が行く旨をスタッフに事前に伝えておくため、私は再びスマホを手にした。
「蔵前さん、という女性が来る」
突然副社長の口からその名前が飛び出し、私は驚いてスマホを膝の上に落としそうになったが、平然を装って電話をかける。
どうやらお母様は、結麻さんと共にスタジオ見学をされるらしい。
どんな感じの人なのか単純に興味はあるけれど、まさかこんなに急にお目にかかることになるとは。
「不手際がないようにスタジオスタッフに伝えましたので」
わざわざ報告しなくても、隣で電話していたのだから全部聞こえていたはずだと言ってから気がついた。落ち着け、と心の中で自分に言い聞かせる。
「強行突破だな」
「……なにがでしょう?」
「実は蔵前さんと俺の両親との四人で、食事の席を設けたいと前から母親に言われていたんだが、俺はずっと拒んでた。たからって、いきなり会社に連れてくるとは思わなかった」
私に余分な雑務の仕事を増やしてしまったと、副社長が申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「蔵前さんとは絶対に会わないつもりでいた。見合いも政略結婚もしないと決めてるからな」
副社長の指示通り、見学希望者が行く旨をスタッフに事前に伝えておくため、私は再びスマホを手にした。
「蔵前さん、という女性が来る」
突然副社長の口からその名前が飛び出し、私は驚いてスマホを膝の上に落としそうになったが、平然を装って電話をかける。
どうやらお母様は、結麻さんと共にスタジオ見学をされるらしい。
どんな感じの人なのか単純に興味はあるけれど、まさかこんなに急にお目にかかることになるとは。
「不手際がないようにスタジオスタッフに伝えましたので」
わざわざ報告しなくても、隣で電話していたのだから全部聞こえていたはずだと言ってから気がついた。落ち着け、と心の中で自分に言い聞かせる。
「強行突破だな」
「……なにがでしょう?」
「実は蔵前さんと俺の両親との四人で、食事の席を設けたいと前から母親に言われていたんだが、俺はずっと拒んでた。たからって、いきなり会社に連れてくるとは思わなかった」
私に余分な雑務の仕事を増やしてしまったと、副社長が申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「蔵前さんとは絶対に会わないつもりでいた。見合いも政略結婚もしないと決めてるからな」