恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
「海老原さんの前の秘書も泣かされてた。……その前の人もだったかな。副社長のそばに女性秘書がいるのが嫌みたい。でもうちの秘書課には、男性で良い人材がいないのよね」
『副社長はイケメンだし、恋心を抱いてしまう人が多くて』と、深沢部長が以前言っていたのを思い出した。
私に対する昨日のお母様の態度は、そうなる前に排除したい、という思惑だったのだろう。
「あのときのお客様、副社長のお嫁さん候補なんだって?」
「え、どうして知ってるんですか?」
「みんな噂してたから」
会社には少なからず噂好きな人がいるものだが、こんなにも情報が広まるのが早いのかと驚きつつ、セットで頼んだサラダを口に含んだ。
「横柄なところもなく、上品で綺麗な方でしたよ」
「そっか。副社長との結婚話が持ち上がりそうね」
「副社長は政略結婚はしないとおっしゃってましたけど……」
突然そこで会話が止まり、どうしたのかと視線を上げると、秋本さんが驚いた顔でポカンとしていた。
「それ、副社長から直接聞いたの? 副社長が自分の結婚について秘書に話したのは、海老原さんが初めてよ」
「そうなんですか?」
「海老原さんは特別なのね」
『副社長はイケメンだし、恋心を抱いてしまう人が多くて』と、深沢部長が以前言っていたのを思い出した。
私に対する昨日のお母様の態度は、そうなる前に排除したい、という思惑だったのだろう。
「あのときのお客様、副社長のお嫁さん候補なんだって?」
「え、どうして知ってるんですか?」
「みんな噂してたから」
会社には少なからず噂好きな人がいるものだが、こんなにも情報が広まるのが早いのかと驚きつつ、セットで頼んだサラダを口に含んだ。
「横柄なところもなく、上品で綺麗な方でしたよ」
「そっか。副社長との結婚話が持ち上がりそうね」
「副社長は政略結婚はしないとおっしゃってましたけど……」
突然そこで会話が止まり、どうしたのかと視線を上げると、秋本さんが驚いた顔でポカンとしていた。
「それ、副社長から直接聞いたの? 副社長が自分の結婚について秘書に話したのは、海老原さんが初めてよ」
「そうなんですか?」
「海老原さんは特別なのね」