恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
 唇を食むように、熱のこもったキスが何度も繰り返される。
 
「遅い。待ちくたびれた」

 私の首筋に唇を這わせながら彼が言う。
 そんなに長い時間は待たせていないはずなのだけれど……などと考える余裕は、どんどんなくなっていった。
 彼が私の体のあちこちにキスを落とすたびに、自然に体温と心拍数が上がっていく。 

「俺を()らせるためか?」

「そ、そんなことは……あっ……」

 Tシャツの裾から彼の手が侵入してきてお腹を撫で、それが胸に到達したときに声が出てしまった。
 私にもこんなに甘い声が出せたのかと、最近の自分に一番驚いているのは私自身だ。

「いい声。莉佐、絶対逃がさないからな」

 敏感なところを指と舌で攻められ、しっかりとベッドに縫い付けられているこの状態で、逃げるもなにもないのに。

 男性として本能むき出しの行為は、彼が私を夢中で抱きたいのだとまるで意思表示をしているみたいだ。
 それがこの上なくうれしいだなんて、恥ずかしいから口が裂けても言えないけれど。

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