恋する理由がありません~新人秘書の困惑~
「この幸せはいつまで続くんでしょうか……」

 行為が終わったあと、ベッドで彼の胸にピタリと寄り添いながら、自然とそんな言葉が出た。

「いつまでって、ずっとだろ?」

 唯人さんは余裕たっぷりだが、それとは真逆に私は不安で押しつぶされそうになっている。
 そんな姿は見せまいと、普段は気を張っているだけだ。

「深沢部長に、私たちの交際のことをそろそろ話そうと思っています」

 この幸せな時間を失うのが怖い。だけどこれ以上隠し続けるのは気が進まない。
 部長ときちんと話すところから始めなければ、私の中で道義(どうぎ)にもとる。

「そうか。俺も堂々としたいから賛成。ふたりで深沢さんに話そう」

「大騒ぎになりますね。秘書の立場なのに、副社長である唯人さんを誘惑した私は、きっと違う部署に飛ばされます」

「それはさせない」

 腕枕をした手で私の額に張り付いた髪を()かしつつ、唯人さんははっきりとそう言い切った。

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