恋する理由がありません～新人秘書の困惑～

6.苦い気持ち

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　深沢部長に話したいと唯人さんに相談したにもかかわらず、仕事の予定などタイミングを見計らっているうちに、さらに一週間ほど日にちが過ぎてしまった。
　
　私は元々、しっかりと考えた上で出した結論に対しては迅速(じんそく)に行動するタイプだ。
　だけどこういう経験は生まれて初めてで、頭ではわかっていても、気持ちがブレーキを踏んで行動を阻止していて、自分でもすごくちぐはぐな感じがする。


　お昼休みになり、コンビニに昼食を買いに出たけれど、暑さのせいか食欲がない。
　ここ何日かはずっとこんなふうで、体がだるくて調子がイマイチだ。厳しい残暑による夏バテだろう。
　食べなければ余計に体力がもたないと思い、一旦はおにぎりを手にしてみたが、どうしても気が進まない。
　結局、サラダとお茶、フルーツ100％のジュース、エネルギーをすばやく補給できるゼリーなどを買った。

　コンビニを出るとギラギラとした太陽の日差しが痛いくらいだった。
　会社まで戻る道のりはたいした距離ではないものの、外は気温が高いので汗が一気に噴き出してくる。

　そういえば、五月に熱中症で倒れて、偶然通りかかった唯人さんに助けられたことがあったと思い出した。
　私は自分で自覚しているより暑さに弱い体質なのかもしれない。

　もうすぐ会社にたどり着く。やはりおにぎりは買わなくて正解だった、と建物沿いの日陰をとぼとぼと歩いていると、こちらにに視線を向けている女性が正面に見えた。