バーテンダーに落ちて酔わされ愛されて
カリフォルニア・レモネード
「おはよう」
「…あ、おはよう」
「何そのやる気のない返事。昨日休んでたけど、どうしたの?」
会社に出勤すると隣のデスクから先に出勤していたあたしの親友、マユがそんなことを言ってきた。
どうしたのって…マユには話したことないから話せないし、それにこんな場所で話すような内容でもないからどの道今は話せない。
「うーん…まぁね」
「何それ?」
あ、やば…私には話せないのって顔してる、ちょっと待って今ここで怒るのはなしだよ。
「ごめん、そうじゃなくて…」
「だったら何?」
さっさと言いなさいって感が凄いなぁ、圧が強い。
もう終わったことだし、マユに話してもいいかな。
「分かった。話すけど、今日の夜でいい?」
あたしはマユにユアとの2年間のことを話すために飲みに誘った。
「いいよ。洗いざらい聞くから」
この子、本当に根掘り葉掘りと私がすべてを打ち明けるまで訊いてきそうだから怖い。
今だってギラついた目が怖いよ。
「ショーマのBARでいい?」
「ショーマさん?いいよ久しぶりに行きたい」
ショーマのBARにはマユも数回行ったことがあり、ここ最近は一緒に行ってなかったから夜はショーマのBARで決まった。
BARには個室もあるからそこで話そうかな。
マユがまた何かを聞いてくる前にあたしは給湯室に逃げ込んだ。
「ふぅ…何を言われるか分かったもんじゃない」
マユはたまにとんでもないこと言う癖があるからヒヤヒヤするんだよね。
速まる鼓動を落ち着けてて深呼吸で冷静になると、あたしはまたマユの隣にある自分の席に忍び足で戻った。
そして黙々と自分の作業を進めていく。
カタカタとキーボードを打ちまくり、電話を取っては対応して他の人に回したり、せかせかとコピーを取りに行ったり。
本当に失恋したのかよって突っ込みたくなるくらいにテキパキ働いた。
ほら、気づけば定時で上がれた。
なんてこったパンナコッタ、じゃなくてなんでいつも通りに上がれてるんだ…ってそれが普通なんだけど、これでも一応傷心中よ?
それなのにいつも通りってそれはそれでおかしくない?
あたし本当に傷ついてるの?て自問自答して「あんなに泣いたのに傷ついてないわけないじゃん!」て言う天使の自分と「あれだけ傷ついたけど、イケメン幼馴染ショーマのあの慰めにちょっとクラってきちゃったんじゃなの?」て言う悪魔の自分がいる。
ふふ、ふざけるなー!!
なんでショーマにときめくの!?ときめく理由が分からない!かっこいいのは認めるとしてもショーマは私のこと妹としか見てないんだからそんな要素ないし!
「ねぇ、何百面相してるの。きも」
「ひ、ひど…」