バーテンダーに落ちて酔わされ愛されて
アビー
翌日、いつものように仕事をこなし、カタカタとキーボードを叩く。
手を止めれば「私の口からは言えない」というマユのセリフがリピートされる。
でもあの後すぐに「いずれ知るときが来るから。必ず来る」と言われたけど、ショーマのことを分かってるつもりでいた私としてはアレがあまりにショックでそのセリフが中々頭に入ってこなかった。
あたしの知らないことをどうしてマユが知ってるの?って疑問に思った。
ショーマはどうしてあたしには教えてくれないのにマユには教えてるの?って思った。
なんだか仲間外れにされた気分。
マユの中にあたしの知らないショーマがいるような感じがしてとても嫌だった。
マユが悪いわけじゃない、ショーマが悪いわけでもない…ただ、あたしが嫉妬してるんだ。
こんなんじゃダメじゃん、ショーマに彼女が出来たらどうするの…いや、すでにいる可能性もあるけど。
昨日のマユの言動で、あたしはショーマ離れをしていないんだと気付いた。
まさかこんなにモヤモヤして嫉妬するなんて自分でもビックリだ。
「んー、疲れた…ご飯食べよご飯」
お昼時間を知らせるメロディーが流れ周りは外に食べに行ったり、お弁当をデスクで食べ始めたり、社食に行ったりする人がいて皆様々だ。
あたしはと言うと、今日は弁当を持参していてこれからいつもの場所でマユと2人で食べる。
そこに行けばすでにマユがいて、マユも今日はお弁当を作ってきたみたい。
同時にオープンすれば色とりどりの可愛らしいマユのお弁当に対し、あたしは和食中心でいかにも健康弁当ですって感じの可愛いと言うにはちょっとだけ無理があるようなお弁当。
「何そのおばぁちゃんの手作り弁当のようなメニューは」
「仕方ないじゃん。これが食べたかったんだから」
そう、今日はきんぴらや肉じゃがとかの気分だったから仕方がないんだ。
「でも、美味しそうだから一口ちょうだい」
マユは肉じゃがの肉の方をかっさらっていったから、私はすかさずウインナーを掻っ攫った。
「あっ、ウインナー!」
「お互い様」
「くそぅ」
「ちょっと、レディーがそんな言葉遣いしない」
「何よそれ」
レディーはレディーだよ、別にプリンセスでもいいんだよ?
プリンセスって言われるのはさすがに嫌かなぁって思ったからレディーにしたのに、それでもお気に召さないわけ?
「とりあえず、もうレディーって言わないでね」
痛いし超キザだからね、て言われてしまいなんか…少し凹んだ。
「それはそうと、アンタ今日も行くの?」
「行くってどこに?」
「ショーマさんのBARよ」
あぁ、ショーマのところか。
今日は金曜日だし本当はいこうかなって、さっき昼前まで考えてたんだけど、
「3日連続で行っちゃったから今日は止めておこうかなった思ったり」
「行かないんだ。ショーマさん待ってるんじゃない?」