おじさんには恋なんて出来ない
美夜は過去を振り払うように仕事に勤しんだ。
しばらく行わなかったライブも積極的にやるようになったし、田村オーナーから勧められた動画配信もするようになった。とにかくできることをやれるだけやった。
気が付いたらバイトは辞めていた。なんとかギリギリではあったが、音楽だけで食べていけるぐらいの収入を稼げるようになっていた。かなりリスキーな賭けだったが、ピアノを弾く時間が増えたおかげで仕事にも繋がった。
MIYAとして売れているわけではないが、著名なアーティストと一緒に仕事をすればその分MIYAの名前も売れる。たとえ裏方でも、アーティストとして自立したかった。
やがて辰美と別れてしばらく後、美夜は一般の男性と付き合った。歳は美夜より三歳上のサラリーマンだ。サポートしたアーティストの友人である彼とは、楽屋に挨拶に来た時に知り会った。
優しい性格の男だった。一緒にいて楽しいと感じていた。仕事にも理解を示してくれたし、お互いを尊重しあえる関係だった。
けれど、最終的には別れた。理由は些細なことで、仕事でストレスを溜めて帰る彼に、美夜が何もしてやれなかったからだ。三歳年上とはいえ、精神的には幼かった。自由に仕事をする美夜に当たるようになり、結果破局した。
その後も何度か男性と付き合った。長続きした人間もいれば、そうでない人間もいる。
女性は恋愛すると、過去の男性の上に記憶を上書きしていくという。その言葉の通り、美夜は付き合った男性の上に付き合った男性を上書きした。それぞれ楽しいところがあったし、辛いことがあった。
けれど、忘れられない恋愛もある。ふとした時に思い出してしまう存在。
辰美は忘れられない人だった。
それは結ばれなかったからかもしれないし、彼が辛い時代に出会った唯一の理解者だったからかもしれない。そばにいて、ただ穏やかに時間を共有した。新しい世界を見せてくれた。
優しかった辰美の記憶は、いつまでも残ったままだった。
他の男性に想ったことが恋だったのなら、辰美に感じたのは愛だ。だからこんなにも残っている。そしてそれは、どれだけ時間が経っても色褪せることはなかった。
しばらく行わなかったライブも積極的にやるようになったし、田村オーナーから勧められた動画配信もするようになった。とにかくできることをやれるだけやった。
気が付いたらバイトは辞めていた。なんとかギリギリではあったが、音楽だけで食べていけるぐらいの収入を稼げるようになっていた。かなりリスキーな賭けだったが、ピアノを弾く時間が増えたおかげで仕事にも繋がった。
MIYAとして売れているわけではないが、著名なアーティストと一緒に仕事をすればその分MIYAの名前も売れる。たとえ裏方でも、アーティストとして自立したかった。
やがて辰美と別れてしばらく後、美夜は一般の男性と付き合った。歳は美夜より三歳上のサラリーマンだ。サポートしたアーティストの友人である彼とは、楽屋に挨拶に来た時に知り会った。
優しい性格の男だった。一緒にいて楽しいと感じていた。仕事にも理解を示してくれたし、お互いを尊重しあえる関係だった。
けれど、最終的には別れた。理由は些細なことで、仕事でストレスを溜めて帰る彼に、美夜が何もしてやれなかったからだ。三歳年上とはいえ、精神的には幼かった。自由に仕事をする美夜に当たるようになり、結果破局した。
その後も何度か男性と付き合った。長続きした人間もいれば、そうでない人間もいる。
女性は恋愛すると、過去の男性の上に記憶を上書きしていくという。その言葉の通り、美夜は付き合った男性の上に付き合った男性を上書きした。それぞれ楽しいところがあったし、辛いことがあった。
けれど、忘れられない恋愛もある。ふとした時に思い出してしまう存在。
辰美は忘れられない人だった。
それは結ばれなかったからかもしれないし、彼が辛い時代に出会った唯一の理解者だったからかもしれない。そばにいて、ただ穏やかに時間を共有した。新しい世界を見せてくれた。
優しかった辰美の記憶は、いつまでも残ったままだった。
他の男性に想ったことが恋だったのなら、辰美に感じたのは愛だ。だからこんなにも残っている。そしてそれは、どれだけ時間が経っても色褪せることはなかった。