おじさんには恋なんて出来ない
第三話 イケてるおじさんは好きですか
香坂美夜はバイト先のカフェを出て自宅へと戻った。時刻は朝の十時。普通は家から出る時間帯だが、美夜は夜型生活だった。
自宅に戻ると荷物を置いて早速ピアノの前に行く。これから練習だ。
美夜が住んでいるマンションは一人暮らし用の賃貸マンションだ。そのため、日中はほとんどの住人が出払っている。ピアノの練習をするには打って付けなのだ。
部屋にあるコルグの電子ピアノは、イヤホンジャックがあるから音が出ない仕様にも出来る。だが、演奏方法によっては鍵盤を叩くだけでも音が響くこともある。そのため、夜はできるだけ演奏を控えていた。
もっとも、美夜はピアニストとしての活動を夜にしているため、夜部屋でピアノを弾くことはあまりない。
これから午後にかけて練習をして、夕方からストリートに行く。
収入はカフェのバイトとストリート活動、ライブ、それかたまに呼ばれるサポートの仕事で決まるため、一日だって無駄にできなかった。
練習を終えると、キーボードを担いで川崎へ向かった。駅前は拓けているし人も多いので絶好のストリートスポットだった。
美夜が駅前に着くと、すでに何人かが演奏していた。アコースティックギターを持って演奏する青年。異国の楽器を奏でる二人組。どちらも名前を知っているアーティストだ。
狭い世界なので、活動していれば勝手に名前を覚えてしまう。だが、ジャンルが違うため共演することはあまりなかった。
美夜が今日ここでストリートすることは告知してある。恐らくファンの何人かは来るだろう。
準備をしている段階で何人かが寄ってきた。よくライブに来てくれているファンの男性達だ。
有難いことに何人かの固定ファンのおかげでなんとかこうして音楽活動を続けられている。だから、彼らは美夜にとってとても貴重な存在だった。
さあこれから弾こうかという時だった。少し離れた位置に、一人の男性が立った。それは最近『MIYA』の演奏を聴きに来る男性だった。
歳は恐らく三十代後半から四十代。背が高く、スーツをビシッと着こなしている姿は凛々しいが、穏やかな男性で、物腰も柔らかい。多分、世の女性が言う「イケおじ」というやつだろう。
美夜は思わず嬉しくなった。この男性は最近聴きに来てくれるようになった客だが、最初に会った時から好印象だった。
CDを全部買ってくれたこともそうだが、男性の言った言葉が嬉しかったからだ。
自宅に戻ると荷物を置いて早速ピアノの前に行く。これから練習だ。
美夜が住んでいるマンションは一人暮らし用の賃貸マンションだ。そのため、日中はほとんどの住人が出払っている。ピアノの練習をするには打って付けなのだ。
部屋にあるコルグの電子ピアノは、イヤホンジャックがあるから音が出ない仕様にも出来る。だが、演奏方法によっては鍵盤を叩くだけでも音が響くこともある。そのため、夜はできるだけ演奏を控えていた。
もっとも、美夜はピアニストとしての活動を夜にしているため、夜部屋でピアノを弾くことはあまりない。
これから午後にかけて練習をして、夕方からストリートに行く。
収入はカフェのバイトとストリート活動、ライブ、それかたまに呼ばれるサポートの仕事で決まるため、一日だって無駄にできなかった。
練習を終えると、キーボードを担いで川崎へ向かった。駅前は拓けているし人も多いので絶好のストリートスポットだった。
美夜が駅前に着くと、すでに何人かが演奏していた。アコースティックギターを持って演奏する青年。異国の楽器を奏でる二人組。どちらも名前を知っているアーティストだ。
狭い世界なので、活動していれば勝手に名前を覚えてしまう。だが、ジャンルが違うため共演することはあまりなかった。
美夜が今日ここでストリートすることは告知してある。恐らくファンの何人かは来るだろう。
準備をしている段階で何人かが寄ってきた。よくライブに来てくれているファンの男性達だ。
有難いことに何人かの固定ファンのおかげでなんとかこうして音楽活動を続けられている。だから、彼らは美夜にとってとても貴重な存在だった。
さあこれから弾こうかという時だった。少し離れた位置に、一人の男性が立った。それは最近『MIYA』の演奏を聴きに来る男性だった。
歳は恐らく三十代後半から四十代。背が高く、スーツをビシッと着こなしている姿は凛々しいが、穏やかな男性で、物腰も柔らかい。多分、世の女性が言う「イケおじ」というやつだろう。
美夜は思わず嬉しくなった。この男性は最近聴きに来てくれるようになった客だが、最初に会った時から好印象だった。
CDを全部買ってくれたこともそうだが、男性の言った言葉が嬉しかったからだ。