おじさんには恋なんて出来ない
第二話 おじさんなんて
辰美は家に帰ってすぐ、CDコンポがないことを思い出した。もともと家で音楽を聴く習慣がなかったため、持っていなかった。
仕方ないので書斎に置いたパソコンで聴くことにした。
CDのジャケットは綺麗な写真だ。CDショップで売っているものとなんら遜色ない。一枚もののジャケットには曲の名前が書かれていた。
早速ドライブにCDを入れて読み込む。ほとなくしてパソコンが中身を読み取った。スピーカーからピアノの音が聞こえてくる。
やはりいい音だ、と思った。これがもっといいスピーカーだったら、細かい音まで聞こえていたのだろう。
辰美は読み取っている間キッチンに行き、コーヒーを淹れた。長らく近寄らなかったキッチンだが、なぜだか気にならなかった。そのままマグカップを持って書斎に戻り、椅子に腰掛ける。
ただピアノを聴いているだけだが、優雅に感じた。部屋に音があるだけなのに不思議な気分だ。
他のCDも封を開けた。CDは全て五曲前後収録されている。穏やかな曲調のものからアップテンポなものまで様々だ。辰美はすっかり『MIYA』の曲が気に入っていた。
ストリートライブは今まで何度か見かけたが、どれも足を止めたことはなかった。ギターを弾いたり歌を歌ったり、うまいと思うアーティストもいたが、それだけだ。
なぜMIYAの曲だけが心に響いたのだろうか。音楽を聴く余裕ができたのか。むしろ、余裕がなかったからなのかもしれない。
離婚はしてしまえばあっという間だったが、浮気発覚から離婚するまで、本当に大変だった。両親が他界していたのはある意味幸運だったかもしれない。親を巻き込まずに済んだ。
何かあった時のためにと雪美の連絡先はまだ消していないが、話し合いがまとまるまで、雪美の実家から何度も電話があったり舅に罵られたりと精神的に摩耗した。
今まで最低限の付き合いで済ませてきたが、まさかあんなに感情的な人達だとは思わなかった。
しかしこれからは自由だ。こうして好きに音楽も聴けるし、仕事で遅くなっても気にせずに済む。
辰美はCDのパッケージを見ながらコーヒーを啜った。ふとそこにMIYAのホームページの情報が載っていたことに気が付いた。
興味が湧いてインターネットの検索画面に文字を打ち込む。『MIYA』の情報はすぐにヒットした。
一番トップの画面には『MIYA』の写真が載っていた。プロに撮ってもらったのか、ピアノを弾いている写真が載っている。
端っこのメニューには活動報告やライブ情報、プロフィールなどがある。まず一番最初にプロフィールをチェックした。
「……横浜出身。高校を卒業後、音楽活動を開始。現在は東京を中心にライブ活動を行なっている、か。ってことは、フリーのアーティストさんかな」
その他の情報、特に『MIYA』個人のことについては何も書かれていなかった。辰美は少々がっかりした。どんな人物か知りたいと勝手に興味を抱いていた。
次に、ライブ情報のページを見た。『MIYA』は月に何度かライブ活動を行なっているようだ。場所は渋谷、川崎と様々だ。チケットの値段は三千円前後だが、相場はどのくらいなのだろうか。『MIYA』の演奏を聴いた後だと安いなと感じた。
どうやら『MIYA』はライブとストリートの演奏を中心に活動しているらしい。
しかし、すごい時代になったものだ。自分が若い頃はああいう活動も盛んでアコースティックギターを弾くアーティストが流行ると若者もこぞって真似をし始めた。続きはしなかったが、自分も楽器を買ったことがある。
だからか、人前でそれを披露してお金をもらっている人間を見ると関心した。
『MIYA』は趣味で活動しているようには見えない。きっとプロだ。
いや、この際アマチュアか、プロかなどどうでもいい。また『MIYA』の演奏を聴きたい。
ホームページには親切に次のストリート情報まで書かれていた。辰美はしっかりとチェックした。
仕方ないので書斎に置いたパソコンで聴くことにした。
CDのジャケットは綺麗な写真だ。CDショップで売っているものとなんら遜色ない。一枚もののジャケットには曲の名前が書かれていた。
早速ドライブにCDを入れて読み込む。ほとなくしてパソコンが中身を読み取った。スピーカーからピアノの音が聞こえてくる。
やはりいい音だ、と思った。これがもっといいスピーカーだったら、細かい音まで聞こえていたのだろう。
辰美は読み取っている間キッチンに行き、コーヒーを淹れた。長らく近寄らなかったキッチンだが、なぜだか気にならなかった。そのままマグカップを持って書斎に戻り、椅子に腰掛ける。
ただピアノを聴いているだけだが、優雅に感じた。部屋に音があるだけなのに不思議な気分だ。
他のCDも封を開けた。CDは全て五曲前後収録されている。穏やかな曲調のものからアップテンポなものまで様々だ。辰美はすっかり『MIYA』の曲が気に入っていた。
ストリートライブは今まで何度か見かけたが、どれも足を止めたことはなかった。ギターを弾いたり歌を歌ったり、うまいと思うアーティストもいたが、それだけだ。
なぜMIYAの曲だけが心に響いたのだろうか。音楽を聴く余裕ができたのか。むしろ、余裕がなかったからなのかもしれない。
離婚はしてしまえばあっという間だったが、浮気発覚から離婚するまで、本当に大変だった。両親が他界していたのはある意味幸運だったかもしれない。親を巻き込まずに済んだ。
何かあった時のためにと雪美の連絡先はまだ消していないが、話し合いがまとまるまで、雪美の実家から何度も電話があったり舅に罵られたりと精神的に摩耗した。
今まで最低限の付き合いで済ませてきたが、まさかあんなに感情的な人達だとは思わなかった。
しかしこれからは自由だ。こうして好きに音楽も聴けるし、仕事で遅くなっても気にせずに済む。
辰美はCDのパッケージを見ながらコーヒーを啜った。ふとそこにMIYAのホームページの情報が載っていたことに気が付いた。
興味が湧いてインターネットの検索画面に文字を打ち込む。『MIYA』の情報はすぐにヒットした。
一番トップの画面には『MIYA』の写真が載っていた。プロに撮ってもらったのか、ピアノを弾いている写真が載っている。
端っこのメニューには活動報告やライブ情報、プロフィールなどがある。まず一番最初にプロフィールをチェックした。
「……横浜出身。高校を卒業後、音楽活動を開始。現在は東京を中心にライブ活動を行なっている、か。ってことは、フリーのアーティストさんかな」
その他の情報、特に『MIYA』個人のことについては何も書かれていなかった。辰美は少々がっかりした。どんな人物か知りたいと勝手に興味を抱いていた。
次に、ライブ情報のページを見た。『MIYA』は月に何度かライブ活動を行なっているようだ。場所は渋谷、川崎と様々だ。チケットの値段は三千円前後だが、相場はどのくらいなのだろうか。『MIYA』の演奏を聴いた後だと安いなと感じた。
どうやら『MIYA』はライブとストリートの演奏を中心に活動しているらしい。
しかし、すごい時代になったものだ。自分が若い頃はああいう活動も盛んでアコースティックギターを弾くアーティストが流行ると若者もこぞって真似をし始めた。続きはしなかったが、自分も楽器を買ったことがある。
だからか、人前でそれを披露してお金をもらっている人間を見ると関心した。
『MIYA』は趣味で活動しているようには見えない。きっとプロだ。
いや、この際アマチュアか、プロかなどどうでもいい。また『MIYA』の演奏を聴きたい。
ホームページには親切に次のストリート情報まで書かれていた。辰美はしっかりとチェックした。