愛しているから殺させて
「あっ、俺さ今日の夜は友達と食べに行くから。だから夕飯いらない。代わりにお金ちょうだい」

ピーターの口から出るのは、「お金ちょうだい」それだけだ。ブランシュはため息をつくも、財布を開けてお札を取り出してしまう。こんなヒモ男でも愛があるからだ。

「ねえ、来週の約束忘れてないよね?」

不安になり、ブランシュは訊ねる。来週は二人が付き合い始めた大切な記念日だ。一緒にお祝いしようとずっと前から約束をしている。

「うんうん、忘れてないから」

ピーターは不安げなブランシュを見ることなく、お金を受け取ると素早く部屋に戻ってしまう。

バタン、と大きな音を立てて閉められたドアをブランシュは見つめることしかできなかった。






< 10 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop