毒吐き幼なじみはときどき甘い。
ドンッと誰かにぶつかってしまって、
よろけた相手の腕を咄嗟にパシッと掴んだ。
「大丈夫ですか」
「あ…はい…」
黒髪の、地味そうな女。
……どっかで見たことあるような…いや、気のせいか?
隣町の高校の制服着てる。隣町の高校に友達はいねぇし…やっぱ気のせいか。
「ごめんなさい、ぶつかってしまって…」
「や、こっちも気をつけてなかったんで」
すいません、と謝ったら、
隣の部屋のドアがガチャ、と開いた。
「ねぇーなにしてんの?」
「ちょっと、ぶつかっちゃって」
「早くジュース持ってきてよ。
ちんたらすんなってー」
俺とぶつかった子は、部屋から顔を覗かせた女に『ごめん』と謝って、ドリンクバーの方へ走っていった。
……パシリ?
部屋から出てきた女、なんか感じ悪。
……って、俺ももしかして、千花に同じことしてんのかな?
『パシリじゃねーんだから、余計なことすんな』
……や、俺はやってない。千花が勝手にやっただけ。
俺がそうしろって言ったわけじゃないから、ノーカンだ。
まぁ今はそんなことはどうでもいいやと思って、トイレに向かった。