松川バーグ
いそいそと戻って来て佐藤の横に立つ松
川。
松 川「次は?」
佐 藤「とりあえず『オリジナル』とか『手作
り』とかっていう言葉を見える所から排
除したらいいんじゃないですかね」
松 川「え?それだけですか?」
佐 藤「そうですよ。そうしてるうちに段々とフ
ェイドアウトしていけばいいんじゃない
ですか」
松 川「そんな事で上手くいきますかねぇ」
佐 藤「そりゃあ、肉も独自のルートで仕入れて
るとかまで言っちゃってるんですから、
すぐにってわけにもいかないでしょうけ
どね」
松 川「そうですよね・・・」
佐 藤「(小声で)ま、肉が独自のルートでって
のはあながち嘘じゃないけど」
松 川「ん?なんか言いました?」
佐 藤「いや、別に。とにかく自分から『オリジ
ナル』とか『手作り』とかはもう言わな
い様にした方がいいですよ。フェイドア
ウトを目指してください」
松 川「そうですね。そうします」
松川が大きく頷いたところで入り口のド
アが開き石田一(イシダ ハジメ)が入ってく
る。
石田の顔を見て松川はハッとして慌てて
段ボールをカウンターの中へと運んでか
ら笑顔で戻ってくる。
石 田「マスター。今日やってるよね」
松 川「はい。もちろん。いらっしゃいませ」
石 田「幟立ってないから不安になっちゃたよ」
石田は佐藤に視線を向けてから自分の腕
時計を確かめる。
石 田「この時間で僕より先に来てるってこと
は・・・」
佐 藤「あ、私ですか?」
石 田「そう、あなただ。マスター、ついに尻尾
を掴みましたよ」
佐 藤「え?何?何?」
石 田「この店に通い始めて早10年。ずーっと
タマゴサンドしか口に合うものが無かっ
たんですけどね」
佐 藤「あ」
石田の言葉を聞いて佐藤は小さく石田を
指差しながら小声で松川に確認する。
佐 藤「(小声で)朝一のタマゴサンドで一日中
居座る小うるさい常連客?」
松 川「正解」
石田の会話を聞くそぶりもなく気にせず
話し続ける。
石 田「半年前からやたら美味しい煮込みハンバ
ーグを出すようになったんですよ。それ
でマスターは肉も独自のルートで仕入れ
てて、ソースを作るところから手作りだ
って言うんですけどね。僕はずっと疑っ
ていたわけですよ。実は雇われのシェフ
がいるんじゃないかってね」
石田は不敵な笑みを浮かべたかと思う
と、佐藤の座っているテーブルにドンっ
と手を付き、グッと佐藤に詰め寄る。
石 田「あなた、シェフでしょ?」
佐 藤「は?違いますよっ」
佐藤は咄嗟に大きく腕を振って否定す
る。
ゆっくりテーブルから手を離す石田。
石 田「違うんですかねー、マスター」
石田は疑いたっぷりの目で松川に呼びか
ける。
松 川「ち、違いますよ~、石田さん。何言って
るんですかぁ」
目が泳ぐ松川。
石 田「じゃあ、この時間に僕より先にここに座
ってるこの人は、何?」
佐 藤「何って」
松 川「それは~・・・。っ!コっ、コーヒーメ
ーカーの人なんです!ねぇ、佐藤さん」
佐 藤「え?」
松 川「ねぇ、佐藤さんっ」
松川の必死の形相に押されて佐藤も頷
く。
佐 藤「そうなんですっ。コーヒー豆を配達に来
たんですっ」
松 川「そうそうそう」
石 田「へーーーー。コーヒーメーカーの人が、
配達先でコーヒー飲むっておかしくない
ですかね?」
松 川「あ~・・・。いや~。あっ、今、味をチ
ェックしてもらってたんですよ。ねっ、
佐藤さん」
佐 藤「あ~あ~そうなんです。いつも通りの香
りとコクが出せてるかなー、なんて、
ねっ」
石 田「へーーーー。あ~、だったら、ついでに
ここのオリジナル手作り煮込みハンバー
グも味見したらどう?コーヒーと合うか
も確かめて行ったら?ねぇ、マスター」
石田はそう言いつつ、佐藤の後ろを通っ
て真ん中のテーブルの椅子に座る。
佐 藤「いや、私はこれで失礼します。お客様は
どうぞごゆっくり」
そう言って立ち上がろうとする佐藤を背
後から松川が肩をグッと体重をかけて抑
え込む。
松 川「そうですよね。折角なんで佐藤さんも食
べて行って下さいよ」
腰を浮かせようとするが浮かせられない
佐藤。
佐 藤「いや、そろそろ戻らないと」
松川は佐藤を押さえながら佐藤の耳元で
囁く。
松 川「この状況で一人にしないでくださいよ」
佐 藤「いやいやいや」
石 田「マスターっ」
松 川「はいっ!」
石 田「いつもの」
石田はテーブルの上にノートパソコンを
広げる。
松 川「はいはい。じゃ、佐藤さんのもという事
で」
松川は佐藤の肩をバンバンと叩いてから
カウンターの中へ入って行く。
川。
松 川「次は?」
佐 藤「とりあえず『オリジナル』とか『手作
り』とかっていう言葉を見える所から排
除したらいいんじゃないですかね」
松 川「え?それだけですか?」
佐 藤「そうですよ。そうしてるうちに段々とフ
ェイドアウトしていけばいいんじゃない
ですか」
松 川「そんな事で上手くいきますかねぇ」
佐 藤「そりゃあ、肉も独自のルートで仕入れて
るとかまで言っちゃってるんですから、
すぐにってわけにもいかないでしょうけ
どね」
松 川「そうですよね・・・」
佐 藤「(小声で)ま、肉が独自のルートでって
のはあながち嘘じゃないけど」
松 川「ん?なんか言いました?」
佐 藤「いや、別に。とにかく自分から『オリジ
ナル』とか『手作り』とかはもう言わな
い様にした方がいいですよ。フェイドア
ウトを目指してください」
松 川「そうですね。そうします」
松川が大きく頷いたところで入り口のド
アが開き石田一(イシダ ハジメ)が入ってく
る。
石田の顔を見て松川はハッとして慌てて
段ボールをカウンターの中へと運んでか
ら笑顔で戻ってくる。
石 田「マスター。今日やってるよね」
松 川「はい。もちろん。いらっしゃいませ」
石 田「幟立ってないから不安になっちゃたよ」
石田は佐藤に視線を向けてから自分の腕
時計を確かめる。
石 田「この時間で僕より先に来てるってこと
は・・・」
佐 藤「あ、私ですか?」
石 田「そう、あなただ。マスター、ついに尻尾
を掴みましたよ」
佐 藤「え?何?何?」
石 田「この店に通い始めて早10年。ずーっと
タマゴサンドしか口に合うものが無かっ
たんですけどね」
佐 藤「あ」
石田の言葉を聞いて佐藤は小さく石田を
指差しながら小声で松川に確認する。
佐 藤「(小声で)朝一のタマゴサンドで一日中
居座る小うるさい常連客?」
松 川「正解」
石田の会話を聞くそぶりもなく気にせず
話し続ける。
石 田「半年前からやたら美味しい煮込みハンバ
ーグを出すようになったんですよ。それ
でマスターは肉も独自のルートで仕入れ
てて、ソースを作るところから手作りだ
って言うんですけどね。僕はずっと疑っ
ていたわけですよ。実は雇われのシェフ
がいるんじゃないかってね」
石田は不敵な笑みを浮かべたかと思う
と、佐藤の座っているテーブルにドンっ
と手を付き、グッと佐藤に詰め寄る。
石 田「あなた、シェフでしょ?」
佐 藤「は?違いますよっ」
佐藤は咄嗟に大きく腕を振って否定す
る。
ゆっくりテーブルから手を離す石田。
石 田「違うんですかねー、マスター」
石田は疑いたっぷりの目で松川に呼びか
ける。
松 川「ち、違いますよ~、石田さん。何言って
るんですかぁ」
目が泳ぐ松川。
石 田「じゃあ、この時間に僕より先にここに座
ってるこの人は、何?」
佐 藤「何って」
松 川「それは~・・・。っ!コっ、コーヒーメ
ーカーの人なんです!ねぇ、佐藤さん」
佐 藤「え?」
松 川「ねぇ、佐藤さんっ」
松川の必死の形相に押されて佐藤も頷
く。
佐 藤「そうなんですっ。コーヒー豆を配達に来
たんですっ」
松 川「そうそうそう」
石 田「へーーーー。コーヒーメーカーの人が、
配達先でコーヒー飲むっておかしくない
ですかね?」
松 川「あ~・・・。いや~。あっ、今、味をチ
ェックしてもらってたんですよ。ねっ、
佐藤さん」
佐 藤「あ~あ~そうなんです。いつも通りの香
りとコクが出せてるかなー、なんて、
ねっ」
石 田「へーーーー。あ~、だったら、ついでに
ここのオリジナル手作り煮込みハンバー
グも味見したらどう?コーヒーと合うか
も確かめて行ったら?ねぇ、マスター」
石田はそう言いつつ、佐藤の後ろを通っ
て真ん中のテーブルの椅子に座る。
佐 藤「いや、私はこれで失礼します。お客様は
どうぞごゆっくり」
そう言って立ち上がろうとする佐藤を背
後から松川が肩をグッと体重をかけて抑
え込む。
松 川「そうですよね。折角なんで佐藤さんも食
べて行って下さいよ」
腰を浮かせようとするが浮かせられない
佐藤。
佐 藤「いや、そろそろ戻らないと」
松川は佐藤を押さえながら佐藤の耳元で
囁く。
松 川「この状況で一人にしないでくださいよ」
佐 藤「いやいやいや」
石 田「マスターっ」
松 川「はいっ!」
石 田「いつもの」
石田はテーブルの上にノートパソコンを
広げる。
松 川「はいはい。じゃ、佐藤さんのもという事
で」
松川は佐藤の肩をバンバンと叩いてから
カウンターの中へ入って行く。