この夜、返品可能です。
三谷くんは少し宵くんに似ているところがある。
女の子は来る者拒まず、特定の女の子は作らない。女の子を泣かせることもしない。優しい彼は、うちの学年じゃプレイボーイ枠にいる有名人だ。
そんな彼のことだから、せいぜいわたしを揶揄うためか、もしくは少しの慰めの意味を込めてそう言ってくれたのだと思う。
「あんま我慢すんなよ」
ポン、と頭を優しく撫でた三谷くんは、小さく微笑むと、「じゃあ、またね」と言って踵を返した。
三谷くんは悪くなかった。
タイミングが悪かっただけ、だったんだと思う。
「───…なぁ、今の何?」
手を振り、背を向けて歩き出すその背中をぼうっと見つめていたわたしにかかった、聞き覚えのある、わたしの大好きな人の声。
いつもより低く 冷たさを含んだそれに、びくりと身体が震えた。