この夜、返品可能です。
宵くんの唇が、わたしの唇に触れた。
押し付けられるように、もうこれ以上喋んなよ?と言うように温度が伝わる。
目を閉じる暇もなく、視界は真っ暗になった。
柔らかいそれが数秒重なった後、ゆっくり離れていく。伏し目がちの宵くんがあまりにも色っぽくて、一瞬見惚れてしまった。
「仁乃、キスもしたことないのに よくセフレにしてよ なんて言えたなおまえ」
「っ、うるさ……」
「今の、序の序の序の口だけど大丈夫そ?」
「えっ」
「なんだっけ、2時間100円?払ったら、その間は仁乃は俺のものになるんだよな」
「や、ややや、待っ待って」
ゾクリ、背中を嫌な汗が流れる。
さっき耳を噛まれた時に感じたものとは違う。
これは危険信号に近いやつだ。
食われる、やばい、このままだと宵くんに食われる。
待ったは全く聞いてくれない。
わたしは押し倒されていて逃げ場は無いし、しっかりファーストキスも奪われてしまった。
それにもう、宵くんは"その気"らしい。