この夜、返品可能です。
「仁乃。いつもみたいなやつ、してよ」
おかしいおかしい。
この時間は、わたしが宵くんより優位なはずなのに。
わたしが宵くんを好きにできちゃう時間なのに、なんか上手いこと誘導されている。
腹筋も触りたいし裸体を見たいしキスもハグもしたい。漫画の王子様みたいな台詞言ってほしいし、わたし専用の宵くんの宣材写真も撮りたかった。
「にーの」
3分で全部やるには、キスで2分も使ってる場合じゃないのに。
「……ん、」
再び唇を重ね、わざとなのか 少しだけ開けられた唇の間に恐る恐る舌を捩じ込ませる───と。
「っ、んう、」
案の定、宵くんの舌に捕まった。
唾液を絡ませ、お互いの熱を共有する。
ああぁもう、こんなはずじゃなかったのに。
何度も何度も角度を変えて深く交わるキスに、段々酸素が足りなくなってくる。
もう苦しいよ、その意味を込めて宵くんのシャツをぎゅうっと握りしめて合図を送ると、宵くんはふっと笑い解放してくれた。